27.アーサーとエレインの仲良し共同作業
試験的にタイトルを変えてみました。
案内された小屋からはうめき声があふれていた。窓から覗くと、話に聞いていた魔物と戦って負傷した騎士らしきガタイの良い男達四人に、最初に襲われた村人達六人が寝かされているのが見えた。
「ここにいる者達は昨日から苦しみのあまり、食事もできないようなのです」
悲痛な顔をしている村長の言葉の通り、彼らの周りにはパンと水が置いてあるが、手を付けられた跡はない。苦しそうに、呻いている彼らを見てエレインも眉をひそめる。
「なぜ、誰も看病をしないのですか?」
「実は……この毒は触れるだけでうつる可能性があるのです……最初は毒におかされていたのは二人だったのですが、彼らを背負った二人も同じ様になってしまい……」
「なるほど……感染系の毒なのですね。厄介な……」
魔物たちはその種類の分だけ様々な毒を持っている。その強さは魔物によって変わるが、他者に感染するほどの力を持つ毒は例外なく強力だ。
だからこそ、聖女であるエレインに真っ先に話が来たのだろう。他国の皇子に、万が一のことがあってはまずいとエレインは声をかける。
「アーサー様、どうしますか? 思ったより厄介な毒のようですが……」
「何を言っているんだ? 俺は治療をしに来たのだぞ!! 逃げるわけがないだろう」
「おお……ありがとうございます……」
「さすがです、アーサー様」
即答すると共にアーサーは、小屋の扉を躊躇なく開けて入る。
「な……アーサー皇子!? ああ、もう、勝手な事をしないでよね!!」
エレインが何かを叫んでいるが気にしない。もちろん彼は感染する可能性がある毒があろうが、苦しんでいる人間は放っておけない……などという高尚な人間ではない。
この女、俺が感染系の毒ってだけで、ビビると思って挑発しやがったな? 見せてやるよ。俺の力をなぁ!!
そう、聖女への対抗心である。
小屋に入るとピリッとした感覚が襲ってくる。彼の身体はわずかな毒すらも感知し……そして、体内に入る前に即座に解毒する。
そう、特異体質であるアーサーにとっては毒などなんでもないのだ。小屋の外で信じられないとばかりに目を見開いているエレインに挑発するかのように殴りたくなるような笑顔を向けた後、近くで横になっている男の治療を開始する。
「よし、お前が一番重症だな。傷よ癒えろ!!」
彼の手から暖かい光が生まれ徐々に男の身体を包んでいくと、その顔色が良くなっていく。そして、もう少しで完治という所で違和感に気づく。
くっそ、治療しても周りの毒にすぐに感染するのか!!
一旦外に出すべきか? 顔を上げるとエレインと目があった。彼女がうなづくと、小屋全体が光に包まれる。
「私だって聖女って呼ばれてるんだから!!」
「な……この女!! こんな広範囲に治療できるのかよ!!」
そう、エレインは一人一人を治療するのではなく、小屋全体に治癒魔法を使ったのである。一人一人を治療する力はアーサーの方が高い。だけど、彼は一度に一人しか治療をする事ができないのだ。
「舐めんなぁぁぁ。俺が最強だぁぁぁ!!」
一人を治療し終えたアーサーは即座に次の人間の治療にうつる。今の彼にはもはや、聖女をわからせると言う事も、善行ノートの事もすっかり飛んでいた。
彼の唯一のアイデンティティである治癒能力で、他人に負けるわけにはいかないという意地だけで治癒を続ける。
そして、休憩も無しに治療を続ける事三時間、彼は小屋の中でだらしなく倒れこんだ。
「終わったぁぁぁぁぁぁ!! 全員治ったぞ」
「アーサー様お疲れ様です。ですが、こんなところで横になっては風邪をひいてしまいます。村長さんが私たちのために部屋を取ってくださいました。そこで休みましょう」
「ありがとう……って、ケイ、ここはさっきまで毒が……」
「それをアーサー様が治療したのでしょう。ならば大丈夫ですよ。私は信じてますから」
そう言うと彼女は微笑んで、彼をおこして、肩を貸す。柔らかい感触と甘い匂いにアーサーは気恥しいものを感じる。
「別に一人で大丈夫だって」
「だめです。アーサー様はご自分で思っている以上にお疲れなんですよ。それにこういう時に甘えてもらうのが専属メイド(姉)の仕事なんですから」
「そうなのか……?」
疑問に思いつつもケイに触れているのが心地よく、アーサーは従うことにした。そして、部屋から出るときにエレインと目が合った。
なぜか顔が赤く、こちらをじっと険しい顔で見つめられ警戒するが、彼女の口から出てきたのは感謝の言葉だった。
「その……ありがと。あなたもすごいのね」
こちらが素なのだろう。ちょっとツンツンした口調でエレインがお礼を言ってきた。
ふはははは、俺の方が明らかに回復量は多かったからな。俺の勝ちを認めたということか? 素直じゃないか。
気分を良くしたアーサーはエレインにねぎらいの言葉をかけてやる。
「ん、ああ、気にするな。まあ、お前もすごかったぞ」
「うふふ、アーサー様ったら照れちゃって」
「別にそういうんじゃない!!」
そう、アーサーはあくまで聖女であるエレインを負かすために頑張っただけである。そりゃあ、くるしんでいる彼らの事を救いたいと思ったのも事実だが……少しだけだ。
そもそもエレインに対してはライバルという感情しかない。だけど、まあ……感謝の言葉は嬉しかったのも事実である。ケイに言われ喜んでいる己を自覚し少し恥ずかしくなって、急いで小屋をあとにするようケイを促す。
そうして、ケイに部屋まで運んでもらったアーサーだったが、もうひと悶着あった。
「夜は村の方々が宴会をしてくれるそうなのでそれまで休みましょう。アーサー様、どうぞ」
「それは……やりすぎじゃないか?」
ベッドの上で自分の膝をどうぞとばかりたたくケイの意図を察し、アーサーは顔を真っ赤にする。
「大丈夫ですよ。アーサー様は私といると落ち着くと言ってくださったじゃないですか。それに、マリアンヌさんから聞いたんです。疲れた殿方は膝枕が効果的だって……それとも、私の膝枕は好みではないでしょうか?」
「いや……そんなことはないが……」
そんなやりとりをして、アーサーはケイの膝枕に甘えることになった。彼女の体温を感じていたせいか、彼が悪夢に苦しむことはなく、ケイも膝の上で寝息を立てるアーサーを見て嬉しそうに微笑むのだった。
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