24.アーサーと聖女の仲良し会談
「俺はブリテンの第二皇子アーサー=ペンドラゴンだ。ブリテンでは一番の治癒魔法使いだと言われてる」
食事の前にと自己紹介をする。もちろんマウントを取るのはわすれない。器の小さい男アーサーである。
「初めまして、私はこのエルサレムで聖女をやっているエレインと申します。同じ治癒魔法使いとして仲良くしていただければ幸いです」
それに対して聖女はにこやかに笑みを浮かべて返事をする。実に大人である。
「ちなみにですね……私はエルサレムでは一番の使い手と言われていますよ」
「ほう……」
全然大人じゃなかった!! エレインの目は一切笑っていなかった。気まずい空気、沈黙が支配するなか会食は始まる。
そもそもアーサーはコミュ障である。彼の前回の記憶と言えば取り巻きの貴族が勝手に喋っており、アーサーは適当にうなずいてただけなので正直こんな空気でなくても話題に困る。
頼みの綱のケイは……と視線を送ると、アーサーの背後で緊張したように立っている。お姉さんパワーでもさすがに聖女のしかも希少なエルフの相手はむずかしかったようだ。
「アーサー様のお噂はこちらにも届いております。貴族の方々を癒し、ブリテンに貢献してらっしゃるそうですね。素晴らしい事です」
「ああ、ありがとう。聖女エレイン様の噂も聞いているぞ。この街は君がいるから安心なのだと、住民が言っていたな。大変そうだがすごいじゃないか。是非ともあなたがどんな風に治療をやっているのか教えてほしいな。そうすれば、俺ももっと人の役に立てるかもしれない。」
エレインの振った世間話にアーサーは先ほどの屋台で感じたことを答える。一見平和そうな会話だが、アーサーの意図は違う。
お前程度の力であれだけみんなに尊敬されるんだ。だったら俺がお前と同じことをすればもっと尊敬されるに違いない。だから、教えろよといっているのである。対抗心がばっちばちである。
そんな彼の思惑に気づいているのかいないのかエレインは一瞬眉をひそめて……会話を続ける。
「うふふ、私は皆様の指示にしたがっているだけですよ。そういえば……最近は孤児院の子供を治療したという噂を聞きましたが本当でしょうか? しかも、かなりの重症だったと事で……何か心境の変化があったのですか?」
「ああ、その話か……」
どこか鋭い目つきで見つめてくるエレインの言葉にアーサーは少し歯切れ悪く答える。やはりモルガンの言っていたようにエレインも、好き勝手に癒すなと言いたいのだろうか? まあ、他の人間は寄付金とかを貰っているみたいだしな……アーサーが少年を治療した理由は自分の治癒能力を侮られてムカついたという理由が大きい。
まずい……これでは俺がわからせられてしまう。
「誰だって痛いのは嫌だろう? あんな子供が苦しんでいるのは見ていられないし、それにあのくらいの治癒はそんなに難しいものじゃないからな」
だからアーサーは本当の理由を隠しつつも言い訳をする。子供が可哀想だから癒したのだと、そして、大した怪我ではないから癒したのだと。
納得してくれたかなとちらっと見るが相も変わらずエレインは難しい顔をしている。
「なるほど……ですが、その子供は平民なのですよね? 失礼ですが、ブリテンの方々は貴族を優先して治療すると聞いたことがあります。それなのにわざわざ平民を癒すという、目立つ行為にはどのような意味があったのですか?」
なんなのこいつ、むっちゃ詰めてくるんだけど!! そんなに俺が平民を治療したのが気に食わないのだろうか? でも、こいつも平民とか癒してるんだろ?
そこまで考えてアーサーはわかった。
ああ、この女は焦っているのだ。
これまでアーサーは取り巻きの言う通りにしていたため貴族しか癒してこなかった。だが、彼が彼女と同様に平民まで癒すとなると、より優れた治癒魔法の使い手(自称)のアーサーが、聖女よりも人気者になってしまうことを恐れたのだろう。
現に前の人生では護衛の騎士が屋台の時のように気安くに声をかけてくることなんてなかった。やはり俺の人望は上がっているっていう事だろう。
ふはははは、器の小さき聖女め、わからせてやるよ。そう言えば……前の人生でゴーヨクが聖女に同じような質問をしていたな。その時はこう答えたはずだ。
「深い理由なんてないさ、むろん限度はあるが俺は俺の助けられる範囲は貴族だろうが平民だろうが助けたいと思っているんだよ。一日の回数制限や、様々な事情があるから全部は救えないがな。それが当たり前だろう」
「平民も貴族と同じように助けるですか……口ではどうとも言えますが、本気なのですか?」
アーサーの言葉にエレインが信じられないとばかりに、目を見開いた。そして、その様子を見ていたケイも口を開く。
「アーサー様のお言葉は本当ですよ。私も平民出身の人間ですが、火傷をした時に治療してくださった上に、私を専属メイドにしてくださいました。この御方は貴族や平民というだけでは差別をしたりしないのです」
「……なるほど……あのお方と同じ考えなのですね……」
ケイの言葉にエレインはアーサーを見つめ、何やらぶつぶつと呟いた。ナイスアシストだ。ケイ!!
ふはははは、聖女め、俺がお前と同じことをしようとしていると知って焦っているな。あとはなんとかこいつの目の前で治療魔法を使って力の差をみせつけることさえできればこいつに負けを認めさせられると思うのだが……
教会にいるケガ人を片っ端から治療したら……多分怒られるよな? 外交問題になったらモルガンに殺される気がする。
あれ、前の人生ではこの後何かあったような……アーサーがそう思った時だった。
ドアが荒々しいノック音と共に開けられる。
「どうしたのですか? 来客中ですよ」
「聖女様!! 申し訳ありません。近隣の村で強力な毒を持つ魔物が現れて……退治しに行った騎士と何人かの村人が毒に侵されて意識をうしなってしまったとのことなのです。救援にいっていただけないでしょうか?」
「なるほど……話はわかりました。訓練を受けた騎士がやられるほどの毒とは……確かに私が行った方が早そうですね……」
ああそうだ。前の人生でも、こうして会食は中断されたのだ。その時はエレインに、可能ならば手伝ってもらえないかと聞かれたが、助ける相手が貴族ではないと分かった途端、取り巻きの貴族が勝手に断ったのだが……
「申し訳ありません、アーサー様……」
「任せろ、俺も手伝ってやるよ!!」
エレインの言葉に食い気味にアーサーは答えた。だって、そうだろう? 同じ毒を癒すのだ。そうすれば否が応でも優劣はつくからなぁ!!
やはりエルフって良いと思うんですよね。
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