23.会食
宿について荷物をおいたアーサー達は聖女との会食のために、教会へと足を運び、会食の準備ができるまでおまちくださいと控室に案内されて一息ついていた。
その中でそわそわしている人間が一人、それはもちろんアーサー……ではなかった。
「アーサー様……私がこんな場にいるのは流石におかしくないでしょうか?」
そう、ケイである。彼女はアーサーの命令という名のお願いで、聖女との会食に同行することになり、あたふたとしているのである。
彼女の指摘は何もおかしなことではない。聖女は教会での最重要人物の一人であり、皇子であるアーサーと同格なのだ。そんなVIP同士の会食に専属メイドとはいえ平民の彼女が同行するなどというのは本来ありえないことだった。
それなのに、彼は当たり前だとばかりにいった。
「何を言っているんだ……ケイは俺の専属メイドだろう? それに俺はこういう場は苦手なんだ。無理にとは言わないが助けてくれないか? ケイがいると心強いんだ」
「アーサー様……そこまで私を重用してくださっているのですね。わかりました。専属メイド(姉ちゃん)頑張ります!!」
アーサーの言葉に感動しているケイ。だけど、アーサーの内心は断られないかとドキドキだったのでむっちゃ安堵していた。
彼は思い出したのだ。前回の会食の時の様子を……その時の彼は取り巻きの貴族だったゴーヨクと行動をしていた。全ての会話は彼がしきっており、アーサーは時々相槌を打つくらいだったのだ。そう、彼はコミュ障なのである。
以前の彼だったらこんな会食は失敗してもいいやくらいの気持ちだが、善行ノートの内容と、出かける時にモルガンがやたらと喜んでいたことを思い出す。
なんであんなに興奮しているかわからんがミスったらむっちゃ嫌味を言われそう!!
前の人生の経験から一人だと絶対失敗すると思いケイに頼ったのである。
平民の私を本当に重用してくださっていると感動しているケイと、コミュ障なため失敗はできないとビビっているアーサーの二人のいる待合室にノックの音が響く。
「アーサー様、大変お待たせいたしました。準備が整いました」
「ああ、わかった」
迎えに来たらしきプリーストの少女に返事をしてアーサーとケイは立ち上がる。その時彼女と目があうと元気づけるように微笑んでくれた。
「そういえば聖女様ってどんな方なんでしょうか? 人格者とは聞いていますが……」
「そうだな。エルフで物静かな女性だよ。そして、この国で一番の治癒能力の持ち主だ」
ふと気になったらしいケイの言葉にアーサーが答える。もちろん、この国でと強調したのは、ブリテンを含めれば俺の方が上だぞという意味である。
常にアピールをするアーサーだった。
「おお、我が国の聖女様がエルフとご存じとは流石ですね。やはり同じ治癒能力者同士興味を持たれたのでしょうか?」
「ああ、まあそんなところだ」
驚いた様子のプリーストに当然とばかりに答える。実際は前世で会ったことがあるからなのだがそんなことを言ったりはしない。
「つきました。今回の会食であの方も熱意を取り戻してくれたら嬉しいのですが……」
「それはどういう……」
プリーストの言葉の意味を聞く前に扉が開かれてしまう。そこにいたのは見目麗しい純白の法衣を身を纏い穏やかな笑みを浮かべているエルフだった。法衣の上からでもわかる起伏の激しい胸元に一瞬目を送りそうになりながら必死に抑える。
俺は今回こいつをわからせに来たのだ。 情けない姿をみせるわけにはいかないと。ましてや見惚れてなんぞたまるかよ!!
対抗心バッチバチである。そして、聖女はというと、アーサーとケイを見て大きく目を見開き、一瞬面白いとばかりに笑みを浮かべると口を開いた。
「初めまして、アーサー様。それに専属メイドのケイ。本日は快く会食を受け入れてくださりありがとうございます」
「このたびはお招き感謝する。俺だけでなく、ケイの同行も許していただき感謝する」
アーサーがお礼の言葉をいうとケイもそれに倣って、マリアンヌに仕込まれたお辞儀をする。そして、アーサーは席についてからふと思う。
自己紹介もしていないのに、俺の事はともかく何でケイの名前を知っているんだろうかと……
聖女はなぜケイを知っていたのか……
面白いなって思ったらブクマや評価を頂けると嬉しいです。




