134.VS終末の猫
「なんだこれ……剣が光っている?」
孤児院を出たアーサーたちが状況を把握すべく王城へと向かおうとした時だった。アーサーの手にある聖剣が輝きだしたのだ。
「これはまさか……聖剣が『終焉の猫』の魔力に反応しているというの? なるほど……さっきまでは完全に復活しておらず余裕があったから孤児院によったのね」
「さすがはアーサー様です」
「あ、ああ……」
モルガンとケイが尊敬の念で見つめて気いるがアーサーの答えは一つである。いや、何この機能、しらんわ、こわ‼
まあ、なにはともあれ『終焉の(パ)猫』のいるであろう場所が分かったのでそのまま向かうと、そこは王城近くの牢獄だった。
「これは……争った後ね……」
囚人だろうか、まるで世界中の憎悪を煮詰めたようなそんな表情でこと切れた死体が目に入る。
なにがあればこのような顔ができるのだろうと、生唾を飲んだアーサーの横で悲鳴が聞こえる。
「ひっ‼」
「ケイ、大丈夫か」
「はい……ですが、手を握ってくださると安心できます」
荒事になれていないというのに、アーサーのわがままに付き合ってついてきてくれたケイに感謝しながらその手を握りしめる。
なぜか、モルガンがもの言いたげな視線を送ってきているが気にしている余裕はなかった。なぜなら……よどんだな魔力が先に進むにつれて強くなっていくのを皆が感じたからだ。
「なんだこの不快な空気は……」
「ええ、この奥にいるわね」
「魔力を持たない私でもわかりますね……これは危険です」
「……」
アーサーたちの言葉にトリスタンが同意し、ケイの握る手がより強くなる。そして、その先は更なる地獄のような状況で……・
なんだよ、これはぁぁぁぁぁ‼
アーサーが思わず後ろ図去りそうになった時だった。
聖剣が再び強力な光を放つと、逃げてんじゃねーとばかりにまるで磁石のように魔力の元である奥へと引き寄せられる。アーサーごと……。
「うおおおおおおお⁉ なんか剣が勝手にぃぃぃぃ」
そして、アーサーが見たのは『終焉の(パ)猫』と向かい合っているエレインの姿だった。
「え、なにこれ? どうなっているの?」
「びっくりしました……アーサー様、大丈夫ですか?」
周囲を見回すと騎士やプリーストたちがうつろな目でこちらを見つめているではないか。「うおおおおお‼ 近づくなぁぁぁ‼」
とっさに聖剣を振り回すアーサー。剣の輝きに触れた騎士たちを覆う魔力が消えたかと思うと糸が切れたかのように倒れていく。
「アーサー皇子、大丈夫? なんでいきなり飛び出したのよ。なにがいるかわからないのよ」
「なるほど……聖女様の危機を察知したのです。上質な三角関係の香りがしますね」
遅れてやってきたモルガンとトリスタンの言葉になぜかエレインは顔を赤らめる。
「アーサー様……まさか、私がここにいるってわかったから危険も顧みずにやってきたの?」
「ん? ああ、そうだ。お前にばかりブリテンの危機を任せるわけにはいかないからな」
もちろん、聖剣が勝手に不思議な力を発揮しただけなのだが、このままでは、こいつ先にいたのよとマウント取られると勘違いしたアーサーは煽るように答える。
正直、ロッドがブリテンを救うのは別に気にしないが、同じ治癒能力を持ちライバル視しているエレインにだけは負けるわけにはいかないと思っているのである。
「アーサー様……来ます」
「うおおおおお⁉」
『……‼』
ケイの悲鳴にも近い声が響くと同時に『終焉の(パ)猫』が巨体のわりに身軽な動作で飛び上がったと思うとこちらに向かって爪をふるってくる。
それは咄嗟の行動だった。悲鳴をあげたアーサーが振るった剣と爪がぶつかり合い甲高い音が鳴り響く。
聖剣の光に『終焉の猫』がひるむと同時に、それと同時にすさまじい暗い感情が襲ってきて……。
「それはもう知っている‼」
前の人生でのつらい記憶が頭をよぎるが、即座にケイとの思い出を胸に打ち破る。
「ふはははは、どうした。『終焉の猫』よ。お前の力はそんなものか‼」
「……エレイン様はいったん引いてください、トリスタン‼ 私たちはアーサー様の邪魔が入らないようにするわよ‼」
「わかりました……これ以上は足手まといにしかなりませんね……」
「お任せください。アーサー様には傷一つつけません‼」
自分が優位になったとわかったとたん調子にのったアーサーが『終焉の(パ)猫』に斬りかかると同時に状況を見て、モルガンはうつろな目をした騎士たちに魔法を放ち牽制する。
『……‼』
アーサーの不慣れながらも躊躇なく攻めてくる一撃にひるむ『終焉の(パ)猫』。このままいけると突っ込もうとした時だった。
「アーサー様‼ 聖剣の輝きが弱まっています」
「え?」
聖剣をみるとケイの必死な声の通りその光が弱まっているのがわかる。
「なんで……魔力が切れたのか? うお⁉」
「アーサー様ぁぁ‼」
思わず動揺した瞬間を『終焉の(パ)猫』は逃さなかった。鋭い爪が彼を襲ったかと思うと血が舞い散りそのまま壁まで引き飛ばされる。
「なんで、聖剣が……こんなのに勝てるのか?」
傷は瞬時に癒えるがアーサーの心に不自然なほどの不安が襲い掛かってくる。なんで俺はこんなのと戦っているんだ? 俺は処刑フラグから逃れられればいいだけだったのに……こんなに頑張らなくても……。
そんなことを考えている間にが『終焉の猫』再度とびかかって襲ってきて……。
「ダメです‼ アーサー様をこれ以上傷つけさせません‼」
ケイが震えた声をあげながら、アーサーと『終焉の猫』の間に割り込んでくる。そして、吸い込まれるように『終焉の猫』の爪がケイを襲う姿がスローモーションに見えて……。




