132.王都の現状
「いったい何がおきているんだ?」
「おそらく、『終焉の猫』があらわる前に避難しているんでしょうね……予想よりもまずい状況みたいね……」
当たり前だが、王都に住む住人の移動は楽ではない。こうも大規模ないどうをするということはすでに復活の予兆があるということである。
「とりあえず王城に向かいたいが人がやばいな……」
あいにく道のほとんどは避難する人間で埋まってしまっている。アーサーの名前を言えば通ることはできるが大きなタイムロスになるだろう。
そう悩んでいる時だった。
「アーサー様、帰っていらしたのですね‼」
聞きなれた声に振り向くといつものメイド服ではなく、商人がきる上質な服を身にまとったエリンがこちらにかけよってきた。
「事情は伺っています、五大害獣を倒すために聖剣を探しにいってらしたのですよね」
「あ、ああ……」
「商人の情報網はけっこうすごいんですよ」
なんで知っているんだと困惑しているアーサーにエリンはにやりと笑い話を続ける。
「今はモードレット様が指揮して、精鋭の騎士たちと共に『五大害獣』と戦っているそうです。なんでも、グラストンベリーの聖女様までいらっしゃるとか」
「モードレットにエレインだと‼」
天敵ともいえる二人の名前に思わず反応してしまうアーサー。それても無理はないだろう、彼にとってはモードレットは自分を殺した相手であり、エレインに関しては治癒能力で競い合っているライバルである。
「あの目立たないようにしていたモードレット皇子が指揮……王位継承に優位に立つつもりなのかしら?」
「いえ、それはないと思います。モードレット様はアグラヴェインを反逆罪で更迭し、『聖剣』を手にしたものこそ王にふさわしいと王位継承権を辞退しました」
「なにがどうなっているんだ?」
「全くね……アグラヴェインがいなくてはモードレット皇子をサポートする人間がいなくなるわ。本気で王になるのをあきらめたというの?」
アーサーとモルガンが驚きの声を上げるが意味は違う。モルガンはモードレットが本当に王位を捨てるのかと困惑しているだけだが、アーサーは過去との相違点に戸惑っているのだ。
彼の知っているモードレットはアグラヴェインと共にブリテンを裏切り革命を先導していたのだ。本来ならば、この騒動の責任を貴族たちに押し付けた方が得策のはずだからだ。
「……わからんな」
しばらく悩んでいたアーサーだったがあきらめた。自分の得意分野は治癒であり、今やるべきことは『聖剣』を使ってブリテンを救うことである。
そういうのは得意なやつにおしつければいいのだ。
「モルガンよ、モードレットが何を考えてるかは俺もわからん。だから何かあったときはお前にフォローを頼みたい。いいか?」
「任せなさい。そっちは私の得意分野ですもの」
「ああ、ありがとう」
頼られたからか嬉しそうなモルガンを見て自分の胸が暖かくなるのを感じた。ああ、そうだ。これが安心感なのだろう。
ケイと共にいるときとよく似た感情をモルガンからも覚え、悪くないとわらう。
「アーサー様とモルガン様は政略結婚だという噂もありましたがガセネタだったようですね」
「ふふ、二人は順調に愛を育んでらっしゃるのです」
意外そうな顔をしているエリンに、トリスタンが余計なことを吹き込んでいるが気にしている時間はなさそうだ。
「王城にいくならばこちらに‼ 商人だけが使う道がありますのでだいぶショートカットになると思います‼」
「ええ、助かるわ。アーサー……どうしたの?」
エリンの案内で先に進もうとしたモルガンだったが、立ち止まっているアーサーに眉をひそめる。
「そうだ……この暖かい気持ちがあれば勝てるってあいつは言っていたんだ……だったら……エリン‼」
「は、はい。どうされましたか、アーサー様?」
「ケイはどこにいる?」
「あの子ですか。おそらく、マリアンヌさんと孤児院で子どもたちを連れていく準備をしているといると思いますが……」
「あいつら……」
こんなことになるとは思っていないアーサーは、もちろん彼女たちに何も命令をしていない。自発的に孤児院の子供たちの面倒をみにいってくれたのだ。
「なあ、モルガン……」
「孤児院に行くんでしょう? 寄り道をするんだったら急がないといけないわね」
「いいのか?」
「必要なことなんでしょう? 私につかまって。トリスタンは意地でもついてきなさい‼」
以心伝心とばかりに頷いたモルガンがアーサーの手を取ると、氷魔法を使って地面を凍らせるとそのままスケートの要領でアーサーと共に走りだすのだった。




