131.いざブリテンへ
聖剣を手にしたアーサーは馬車を猛スピードで走らせてブリテンに向かう。
「ロッド兄さんは大丈夫だろうか……」
「命に別状はないのでしょう? それにあの二人は嘘のつけない場所でしっかりと話した方がいいと思うわ」
一刻を争う事態ということもあり、馬車に乗っているのはアーサーとモルガン、トリスタンの三名である。
猛スピードで進む馬車に乗りながらアーサーはすさまじい魔力を放っている聖剣の鞘を撫でる。
「それにしても俺が聖剣を手にするとはな……まるで本当に聖王の後継者じゃないか」
『聖王』は理想の王とされた人間だ。今は多少違うとはいえ、処刑から逃れるべく行動していただけの自分に後継者が務まるだろうか……。
さすがの世間知らずのアーサーも、試練を受け伝説のアイテムともいえる『聖剣』や周囲の反応から今回の『五大害獣』がこれまでとは違うとわかってしまったのである。
少し不安そうな表情を察したのかモルガンが話しかけてくる。
「そうね……だけど、ロッド皇子には悪いけど、私はあなたこそが聖剣を手に入れるべきだと思っていたわ」
「そりゃあ、治癒能力は持っているけどさ……俺はそれだけだろ」
つい、弱音を吐いてしまいいつものように煽られるかと思いやらかしたと後悔するアーサー。
だが、予想に反してモルガンは元気づけるようにそんな彼の手を握る。
「それは違うわ。私があなたを聖剣にふさわしいと思ったのはそれだけじゃないもの。あなたは治癒能力をただしくつかって、貴族はもちろん、平民、ドワーフなど様々な人間を救ったわ。そのあり方が聖王の後継者にふさわしいと言っているの」
「前も言ったろ、俺のそれは偶然だって……たまたまみんなを救えただけなんだよ」
「そうね、あなたの言う通り確かに救ったのは偶然かもしれない。だけど、みんなに慕われるように行動したのは偶然じゃないでしょう? みんながあなたについてきているのはあなたに救われたからじゃない。あなたを慕ってついてきているのよ」
「モルガン……」
正直モルガンがいっている皆に慕われる行動というのはよくわからない。だけど、自分が彼女に好まれているというのは先ほどの試練の事もありさすがにわかっている。
だけど、なんで……?
「ふふ、いいことを教えましょう。アーサー様、普通の貴族は……ましてや王族は一介の騎士と恋バナなんてしないんです。あなたには特権階級特有の壁がない。人は世間知らずというかもしれませんが、わからないことは興味深そうに聞き、身分など気にせずに話してくださり文句を言う時は言う。それだけで我々のような人間は嬉しくて慕ってしまうのですよ」
「そういうものなのか……」
馬を操りながら恥ずかし気に言うトリスタンに困惑するアーサー。彼的には単に何もせず、知ろうとしなかったことを後悔したから積極的に聞いているだけに過ぎないからだ。
だけど、それをみんながいいって思ってくれるのはなんだかうれしいな……。
思わず笑みをこぼしていると、なぜか隣のモルガンは不満そうに唇を尖らしている。
「なんで機嫌悪そうなんだよ……」
「別になんでもないわ」
怪訝な顔をするアーサーにモルガンは拗ねたように顔をそむける。どうしようか悩んだ結果、さっそくトリスタンに褒められように聞いてみることにした。
「なあ、トリスタン、なんでモルガンは機嫌がわるくなっているんだ」
「ふふ、本当に素直なところがりますね、アーサー様は……」
苦笑しつつもトリスタンはにやりと笑って答える。
「自分も同じようなことを言ったのに、私の言葉の方に納得したのが悔しかったんでしょう」
「え……?」
「トリスタン‼ 余計なことを言わないように」
モルガンに睨まれたトリスタンは話題をかえるように声をあげる。
「そろそろブリテンが近づいてきましたよ……何やら様子がおかしいですね」
「王都の人間が外に避難しているのかしら?」
二人が疑問に思うのも無理はない。ようやく見えた景色は象徴ともいえる城が遠目に見える中大量の人間や馬車が王都からはなれていく姿だったのだから……。




