120.
「うおおおおお、砂漠を走るのってたのしいなぁ‼」
「ふふふ、外の方でそう言ってくださるのは本当に珍しいんですよ」
「ぎゅるるるるる‼」
モルガンたちと別行動をしているアーサーたちはクリムゾンアローにのって、砂漠を爆走していた。
大人数の場合は安全性を考慮しているが、二人っきりのため全力で飛ばすのは実に爽快だった。アーサーが今度はケイと一緒にいきたいなと思うくらいである。
「ああ、そうだ。このロザリオって本当にもらっていいのか? 試練の谷にあったんだ。砂漠の民のものなのだろう?」
「それがアーサー様に反応したということは聖王様の持ち物かもしれません。正統な後継者にお返しすべきだと兄とも話し合って決めましたのでご安心ください」
「そういうものか……」
気のない返事をしているアーサーだが、もしも、モルガンがこれを聞いていればガッツポーズをしていたであろう。
なぜならば、今の発言は砂漠の民の族長がアーサーを『聖王』の後継者だと認めたということだからだ。もちろんアーサーはそんなことはわかっていないので、ただ、どこにしまおうかなぁと考えているだけである。
「アーサー様こそ、なんで私たちのためにここまでしてくださるのですか? 食糧問題を解決しただけでなく、こうして争いの仲裁まで……普通は見捨てるものですよ」
「何を言っているんだ。俺たちは仲間だと言っただろう。それに何度も言っているが俺とロッド兄さんは仲良しだ。ちょっと話せばすぐに和解できるさ」
「本当にお優しいのですね、あなたは……」
アーサーの気楽そうな口ぶりにミランダは涙を流しそうになる。
当たり前だが、一度騎士を派遣してしまえば単なる誤解でしたーとはならない。なぜならば、そのためにお金はかかっており、成果がなければその責任を誰かがとらなければいけないからだ。ロッドもアーサーも王位継承を争っているのだ。失点は避けたいはずなのである。なのに、何でもないことのように言うアーサーに感動したのである。
後ろで自分に抱き着いている少年が、まさか、子供の喧嘩の延長のように『誤解だよ』で済まそうとしているとは夢にも思わないミランダだった。
「そろそろ、見えてきました。あそこにロッド様はいらっしゃるでしょうか?」
「うーん、どうだろうな。もう少し近寄れるか?」
「お任せください、いきますよ、クリムゾンアロー‼」
「ぎゅるるるるる‼」
ミランダの指示に従ってクリムゾンアローがラクダにのった騎士の集団に接近していく。砂煙をまき散らしながら進むその姿に騎士たちも気づかないはずもなく、矢をかまえるが……。
「おい、お前ら‼ ロッド兄さんはどこにいるんだ? アーサーが話しに来たと伝えてくれないか?」
「え、アーサー様? 本物か?」
「見たことあるぞ。砂漠の民に捕らえられているんじゃなかったのか? なんで仲良くいっしょにいるんだ?」
矢を構えていた騎士たちが困惑しながら武器をおさめる。
「ロッド兄さんは勘違いしているんだ。砂漠の民とはすでに和解している。俺はそれを使えに来たんだ」
「いったいどうなっているんだ?」
「ロッド様に説明すべきか? でも、あの人がアーサー様の話をきいてくれるのか?」
「何かもめているようですが、大丈夫でしょうか……」
ざわめく騎士たちにミランダが不安そうにつぶやくとアーサーは前の人生のモルガンの言葉を思い出していた。『あのね、王であるあなたがしっかりしていないと騎士たちはちゃんと動けないの。彼らは責任を負う立場じゃない……私たち貴族や王族の仕事なのよ。ちゃんとした判断ができるように様々なことを学ばなければいけないの』それはかつての苦い記憶である。
だけど、今ならば彼女の言うことも少しはわかる。シーヨク質の言う通りにしていた時はわからなかったが、何かを考えて行動するというのは大変なことなのだ。
「お前らに何かしてくれと言っているわけではない。ただ、ロッド兄さんのいる場所を教えてくれればいいんだ」
「でも、場所を教えてロッド様が奇襲されたら……」
「砂漠の民は奇襲を得意とすると聞くからな」
アーサーの言葉に動揺しつつも騎士たちはミランダを見て警戒心を解かない。そんな状況で一人の騎士が一歩前に出てきた。
「アーサー様‼ 話し合いにいくというのならそこの砂漠の民とお二人でいくとお約束してください。それが条件です」
「おい、アーサー様にそんな生意気なことを言ったら……」
「わかった。アーサー=ペンドラゴンの何おいて誓おう。証人はお前らだ。これでいいか?」
他の騎士が慌ててアーサーの顔色をうかがっているも予想外の反応に驚く中、前に出てきていた騎士が頷く。
「わかりました。ロッド様は今ごろこちらの中央部にいます。魔物の多い所に潜んでいるとおっしゃっていましたから」
「こっちはアーマーサソリの巣ですね。そんなところに代人数が住めるはずないのに……」
騎士の言葉にミランダが少しあきれたというようにつぶやく。そして、目的地へと向かおうとしてアーサーは疑問に思ったことを口にする。
「なあ、なんでお前は俺を信じたんだ?」
「私はハーヴェ様の部下です。そして、あなたが黄金小麦のために尽力を尽くしてくださっていたのを目の前でみていました。そんなあなたなら信用できると思ったんです」
「そうか……ありがとう。今度うまいクッキーでもごちそうしてやるよ」
他派閥の騎士の瞳に尊敬の念が宿っているのに気づき少し気恥ずかしくなったアーサーは軽口を叩きながら再びクリムゾンアローにのるのだった。




