112.聖王の伝言
広間へとたどり着いたミランダだったが、万能の木の実ではなく石板を食い入る様にいるように見つめていた。
アーサーもこっそりと覗いてみるが砂漠の民の言語のせいかさっぱりわからない。
「いったい何が書いてあるんだ? 万能の木の実の美味しい調理の仕方とか……?」
「いえ、これは初代族長が私たちに残した伝言のようなものです。なんでも……『ブリテンが困ったときは何があっても助けよ……そして、真に困ったときはブリテンが助けてくれるであろう』と……聖王様との深い友情が描かれていました」
ミランダが感極まったとばかりに石板を抱きしめる。今は敵対している砂漠の民とブリテンだが、かつては中も良く交流があったということなのだろう。
何百年も昔のことであるためアーサーにもわからない。だけど、ミランダが持ち上げた石板の下に古いものの一切の錆を感じさせないロザリオが目に入ったので何気なくアーサーは手に取った。
「うわぁ!?」
手に取るとロザリオは一瞬光ったかと思うと、不思議な魔力が入って来るのを感じる。
★★★
その空間はいちめんが真っ白の不思議な空間だった。
「俺はミランダたちといたはずじゃ……」
いきなりのことにあたりを見回すも壁も何もなく、真っ白い世界がずっと広がっているようにみえる。
「おーい、だれかいないのか?」
大声を上げるももちろん返事はない。そこでアーサーは一つの事を考え付いた。
「ランスロットのアホ―!! 意味深にこっちをみつめててこわいんだよ!! モルガンの小姑!! もっと俺に優しくしてくれてもいいだろーー!!」
そう、ストレス発散である。誰が聞いているかわからない城の中では言えないことを叫んだのである。
語彙力に関しては……まあ、触れないでおこう。
『楽しそうだね。モルガンというのは君の恋人かな? うんうん、わかるよ。僕もよくしりにしかれていたものだ』
「うおおおお?」
背後から突然声が聞こえおどろきのあまり飛び上がると、その人影はくすりと笑った。
『ここに来たということはブリテンは再び、砂漠の民と手を取りあったということかな?』
目の前の青年は十七歳くらいの金色の髪をした温厚そうな青年である。どこかアーサーに似た顔をしているが、その雰囲気は違う。
媚びるような笑みではなく心の底から優しさのにじみ出る笑みを浮かべており、その瞳には確固たる自信があった。
そう……一目で器の大きさが違うのである。
「お前は……何者だ?」
『僕かい……そうだね。君たちが聖王と呼ぶ存在だよ。とはいってもマーリンの魔力で残留思念だけを残してもらっているんだけどね』
「なっ……」
とてもではないが信じられない言葉だが不思議とアーサーは納得できた。それというのも彼の魔力はとても身近な、アーサー自身がもつ治癒の魔力と似ていたからだ。
「その……聖王が一体どうしたというんだ?」
「僕は心配性でね……大事な大事なブリテンが危機に陥ったら発動するアイテムをいくつも用意しておいたんだ。それがこの一つ……聖杯の力を宿したロザリオだよ」
「ブリテンの危機だって……?」
驚くアーサーに聖王を名乗る青年が頷いた。
「それは内乱かもしれないし、何者かの陰謀かもしれない。そう言った何かが起きたときのために、僕は準備をしておいたんだ。君は『善行ノート』を持っているだろう? それも僕がのこしたものの一つだよ」
聖王はアーサーの『善行ノート』がしまってある胸元を指さすと、にやりと笑った。
「多分君は先祖返りって言うのかな……僕の力をだれよりも強く受け継いでいるんだろう。だから、兄弟で力をあわせてブリテンを……彼女を救ってあげてくれ……頼む。そうしないと……が……ほろんでしまう」
「おい、一体何が滅ぶというんだ?」
アーサーが慌てて声をあげるも聖王の姿は掻き消えて、真っ白い空間も砕け散っていく。
★★
「アーサー様!! アーサー様!! 大丈夫ですか?」
「ん? ああ……すまない」
当りを見回すとかなり時間が立っていたのかミランダが心配そうにこちらをのぞいている。
誰かと話した記憶はあるのだが思い出せない。
「アーサー様!! そろそろ魔物の数が多くてがまわらなくなってしまいます」
「ああ、悪い。いくぞ、ミランダ!!」
「はい!!」
アーサーが意識を失っている間に万能の木の実の苗木を手にしたミランダが笛をふくとクリムゾンアローが走り出し、溶けかけている氷の道へと進んでいく。
これでなんとかなるかな? だが、何か大事なことを忘れているそんなきがするアーサーだった。
そして、彼のポケットにはいつのまにかロザリオがあるのだった。
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