109.試練の谷での戦い
「アーサー様お気を付けください!!」
「ほう……砂漠の魔物と戦うのは久しぶりですがなかなか手ごわい……血沸き肉踊りますね」
洞窟の中を歩いていくと巨大なサソリの魔物アーマーサソリという珍しい魔物が襲い掛かって来る。
本来ならば苦戦するはずなのだが……
「すごいです……鉄よりも固い皮膚を持つアーマーサソリ真っ二つに斬るとは……」
「これでもブリテンの騎士ですからね。ところで、ミランダ殿は人妻だったりとかしますか? もしくは婚約者がいるとか……」
「いえ……私は後継者問題がややこしくなるので、兄が子供をつくるまでそういう方はつくらないようにしているんです」
「なるほど……残念ですね」
なにが残念なのだろうか……露骨にテンションの下がっているランスロットを見て、内心でツッコミをいれるアーサー。
「剣が通じないならこういう魔物はどう倒すんだ? なんか曲がっている剣だと切れ味でもあがるのか?」
「兄が使っていたシミターのことですね。あの剣は軽量で動きやすいだけですよ。
砂漠ではみんな軽装ですからね。主に対人戦で使われるんです」
アーサーの疑問に優しく微笑みながら答えるミランダ。そして、前からやってきたアーマーサソリに対して一歩前でると、笛を鳴らす。
「ぎゅるるるるる!!」
「きしゃあぁぁぁぁ!!」
地面が盛り上がったかと思うと、サンドウォームが二匹のアーマーサソリを飲み込んだのである。
そして、アーマーサソリの悲鳴と共にバキバキという咀嚼音が響きわたった。
「なんとぐろい……」
「よくやりましたね。クリムゾンアロー。いい子です」
荒事になれているランスロットですらちょっと引いている光景に、口にアーマーサソリの破片をはさんだまま、まるで褒めてとばかりにその無機質な瞳で見つめてくる。
「もう、本当に可愛い♡ うふふ、さすがでちゅねーいい子いいこでちゅー」
そんなサンドウォーム……クリムゾンアローをミランダは破顔しながら頭をなでていたが……アーサーとランスロットの視線に気づいた彼女は顔を赤らめながら気まずそうに顔をさらす。
「そのですね……私は砂漠の生き物がちょっとだけ人よりも大好きでして……やっぱり変ですよね……」
「変なものか。自分を慕ってくれるものに愛情を示してなにが悪いんだ? それにこいつもミミズみたいで可愛いしな」
「ぎゅるるるるる!?」
「アーサー様、さすがにきけんでは?」
躊躇なくクリムゾンアローに近づくアーサー。彼が恐れないのは二つの理由がある。一つは前世で散々利用されたアーサーは動物とはいけ忠義をしめすクリムゾンアローに好感を抱いていた。
そして、もう一つは温室でそだったアーサーは虫などに抵抗がないのだ。そう……小さい子供がミミズなどの躊躇なくふれることができるように、精神年齢が低いアーサーもまた気にしないのである。
「アーサー様もわかりますか!! この子の可愛らしさが!! つぶらな瞳に、強固な鱗!! しかも、餌を上げると本当に可愛らしく鳴くんですよ!!」
「ああ、いいなぁ。それにクリムゾンアロ^という名もいい。俺もペットを飼ってみたいな。サンドウォームってブリテンでも飼えないのか? 名前はエクスカリバーとかどうだろうか?」
「アーサー様……絶対にやめた方がよいと思います……モルガン様が泣きますし、サンドウォームは砂漠でしか生息できませんよ」
和気藹々と盛り上がる中ランスロットが冷静にツッコミを入れる。ちなみに本当にサンドウォームをペットにすれば、モルガンが彼部屋に近づくことが減り、憂鬱な表情が増えるため、不仲説がながれることになり処刑フラグが少し復活するのだが、神ではないアーサーも想像するよしはない。
「ですが……かの聖王は人種を気にせず接してくれたといいます。あなたも同じなのですね。ライラもサンドウォームを恐れていた私に色々とおしえてくれましたっけ……」
興味深そうにクリムゾンアローと接するアーサーにミランダがやわらかい笑みを浮かべて受け答えをしており、ランスロットはそれをまぶしそうに見つめていた。
会話もひと段落して進んでいく三人。
「だが、これだけ戦力があれば万能の木の実も簡単にとれるんじゃないか?」
「いえ、魔物は正直大した脅威ではないのです。この先を見ればわかっていただけるかと……」
怪訝な顔をするアーサーとランスロットに苦笑しながら、ミランダは先へ進む。そして、その先にあったのは……
今月の29日にこの作品の二巻が発売されますので、よろしくお願いします。
表紙はアーサーとガウェイン、マリアンヌとなります。




