107.砂漠の民との対話
「死の軍団は確かに倒したはずだが……」
「そうよ、アーサー皇子が見事打ち破っていたのを私も見たわ」
あれは壮絶な戦いだった。エレインのせいでみんなが魔法をうちこんでくるし、バッタに似た魔物が体をはってくるのは痛みこそ感じないもののその感触は今でも思い出せるくらうきもかったなぁと思い出しげんなりするアーサー。
かなり軽いノリだが、ブリテン的にはもちろん、違う。『五大害獣』の一角を打ち破った上に敵対勢力に力を貸したのだ。彼がこの出来事が歴史に残るほどの偉業だと知るとはまだ遠い未来である。
「はい、その噂は聞いております。ただ、『死の軍団』には生き残りが何体もおり、彼らの一部はこちらにも逃げ出してきたのです」
「なるほど……『死の軍団』の本体を倒したアーサーに駆除をお願いしたいってことかしら?」
「いえ……幸いにも生き残りは少数だったので、駆除には成功しました。ただ、我々の食糧庫の作物が全滅してしまったのです。このままでは来年の作物をとることができないくらいに……」
モルガンの言葉に首を振ったミランダが悲痛な表情で呻く。そう言われてみると、砂漠の民ではそれなりの立場にあるはずの彼女も心なしかほほがこけている気がする。
「だから、あなたたちは黄金小麦を奪ったというの?」
「はい、もちろん、我ら砂漠の民の総意ではありません。ですが、それだけ食料問題がひっ迫しているのです。そして、優れた魔力を持つという黄金小麦ですら砂漠では育つことはありませんでした……」
「うん? ならばなんで俺の力が必要なんだ? 確かに魔力を使って黄金小麦を増やしたが、あれは『死の軍団』との戦いがおこした偶然だぞ。俺がいても食料問題は解決しないんじゃないのか?」
「それはですね……」
「敵襲です!!」
ミランダが真意を語ろうとした時だった。荷台が揺れたかとおもうとトリスタンが声を張り上げランスロットも武器を構える。
一体なにが……と考えていると、飛んできた矢を見てミランダが唇をかむ。
「くっ……やはり彼らは異国の人間を認めませんか……」
「一体どういうこと? あの格好に、あの武器は明らかに砂漠の民じゃないかしら?」
モルガンの言葉で気になったアーサーが窓から顔を出すと、すこし遠くに小規模な明かりが点々としているが見える。あれが砂漠の民の里なのだろう。
その前に矢や、シミターといった曲刀を手にしたか褐色の人間たちが、前に立ちはだかっていた。
ミランダが口笛を吹くと、サンドウォームは徐々にその足を緩めていき、彼らの前で止まった。
「どこかに行ったかと思ったらブリテンの人間を俺たちの里に招こうなんて、何を考えているんだ、ミランダ!!」
「兄さんこそ、我らの危機に異国の人間の力を知恵を借りるべきでしょう。今の私たちではあの試練を超えることはできないんですよ!!」
「ブリテンの人間なんてしんようできるものか、お前はライラの事をわすれたのか!!」
「ですが……」
怒鳴りあう二人に、他の砂漠の民たちも肩をすくめている。おそらくだが、日常茶飯事なのだろう。
というかミランダって思った以上に偉い人の娘なんだなぁとくだらないことを考えていると、ランスロットがぼそりと呟く。
「彼らは結局何も変わっていないのですね……ライラの遺言すら無視するとは……」
その瞳はとても冷たく、殺気立っていることに気づく。なにこれこわい……疑問に思ったアーサーがモルガンに視線で問うも彼女も知らないのか首をふる。
「な、お前はランスロット……? そうか、ミランダをだまして俺たちを倒すつもりだな。ライラの時と同じように!!」
「兄さん、何を!?」
ランスロットの殺気に気づいた恐怖に染まった顔で族長が矢を放つと、それはサンドウォームの直撃してしまう。
さいわいそれが傷つけることはなかったが、驚いたサンドリザードもまた大きく暴れる。
「うおおおお??」
「アーサー様!!」
そうして、無防備にクッキーを食べようとしていたアーサーは荷台から転げ落ちるとそのまま流砂に巻き込まれて行ってしまう。
とっさにランスロットとミランダが手を掴むも、そのままおちていくことしかできないのだった。
今月の29日にこの作品の二巻が発売されますので、よろしくお願いします。
表紙はアーサーとガウェイン、マリアンヌとなります。




