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103.砂漠の民

「アーサー様!!」

「待ってください、あの魔物からは殺気を感じられません。砂漠の魔物を傷つければ砂漠の民との争いの火種になりかねません」


 真っ先に反応したのはトリスタンである。彼は弓をつがえると、そのまま襲ってきた魔物……サンドワームを狙おうとしたが再びランスロットが制する。

 サンドワームの皮膚の表面は硬質な鱗や滑らかな皮膚で覆われ、砂を掻き分ける際に抵抗を最小限に抑えるため、ざらついた質感と淡い黄褐色を帯びているのが特徴である。

 そして、円形に開かれた口は、暗闇の奥に続いており、無数の螺旋状に並んだ鋭利な歯がまるで檻のように口内を覆っていた。

 

 こんな魔物に食べられたらもはや成すすべはないだろう。そんな状況でアーサーがとった行動は……



「大丈夫だ、俺が守ってやろう」

「え? お兄ちゃん?」

「アーサー皇子なにを!?」



 モルガンの悲鳴にも似た言葉を無視して、まるで少女の盾になるかのように一歩前に出たのである。

 これは別に彼が騎士道精神にあふれている……などではない。コカトリスや、アシッドスライム、死の軍団に攻撃を受けまくった彼はすでに感覚がマヒしていた。どうせ痛みも感じないし、すぐ再生するから大丈夫だろうと、少女が死んだら目覚めが悪いなと思った程度である。



「アーサー皇子!! あなたの事は私が……」

「落ち着いてください。モルガン様。あの魔物には殺気がありません。おそらく、何者かに飼われている魔物かと……おそらく砂漠の民です。うかつなことをしてはいけません」

「そんなことを言って、万が一があったら!!」

「ぎゅるるるるる!!」



 ランスロットとモルガンのやりとりの間にもサンドワームはアーサーの目の前にやってきて大きく口を開けたかと思うと……その動きを止めたのだ。

 そして、建物の影から褐色の民族衣装に身を包んだ十八歳くらいの笛を持った褐色の少女が姿を現した。



「……ブリテンのアーサー皇子は戦闘力はないと聞いていたからどうするかと思っていたけど、まさか砂漠の民を身をていして守るとは……」

「ミランダお姉ちゃん!?」


 顔見知りなのか少女がミランダと呼ばれた少女の方に駆け出していく。



「……砂漠の民だろうが、なんだろうが痛いのは嫌だろうが。子供ならなおさらだ。当たり前のことだろう? それよりもお前は何者だ?」

「威嚇かもしれないけれど、王族に手を出そうとした罪は重いわよ」



 アーサーがサンドワームを前に謎の少女を睨むとトリスタンとモルガンたちがアーサーの横に並びいつでも戦えるぞとばかりに武器を構える。

 さすがのランスロットもそれには文句のないようで、剣に手をおいていつでも戦えるポーズをしている。



「まずは試したことを詫びさせてください。アーサー様!! 私の命はどうなっても構いません、お話をきいてもいただけないでしょうか? 砂漠の民は今『死の軍団』のせいで絶体絶命の状態にあるのです」

「え?」


 いきなり土下座をする謎の少女にアーサー思わず間の抜けたことをあげてしまう。だって、『死の軍団』はもう倒したはずなのだ。

 なのに一体どういうことなのだろう。


「はい、死の軍団がなぜかこの砂漠までやってきたのです。まるで何者かに追われるのを恐れているかのように……そして、我らの食糧を喰らったのです……」

「ああ、そういうことね……アーサー皇子に恐れをなして逃げ出した『死の軍団』がむかったさきがあなたの里だったのね。本来食料の少ない砂漠に向かうなんてよっぽ必死だったのね」



 二人の会話を聞いているアーサーのほほを冷や汗が流れる。え、それってまずくない? だって、絶対俺のせいじゃんと……自分が暴れたので砂漠の民が危機に陥っているのである。


 あの時は黄金小麦を守るのに必死だったのだ。そもそもあんな数の虫を全部倒すとか無理だろ。


 そう自分の中で言い訳をしたアーサーは偉そうにかっこつける。



「気にするな、王族たるもの。試されることには慣れている。それでいったいどうしたんだ?」

「……」



 アーサーはモルガンの方を見てにやりと笑う。未だ彼女に試されていると勘違いしている彼はしてやったりとばかりの態度だったため、他の人間が息を飲んだのには気づかなかった。

 そう……彼らは勝手な理由で襲われたというのにアーサーが怒りを一切見せずにむしろ微笑んだことに驚いたのである。



「ありがとうございます。そろそろ衛兵がやってきます。今夜迎えに伺いますので私たちの家でお話ししましょう。もちろん、護衛の方も一緒で構いません」

「じゃあねー、アーサーお兄ちゃん」

「ぎゅるるるるる!!」



 少女が笛を鳴らすと幼女をかかえ笛を鳴らすとサンドウォームが彼女たちを頭にのせて猛ダッシュで去って行く。

 それから少し遅れて衛兵がやってくるのを見ながらアーサーは考え事をしていた。


 『死の軍団』まだいるのかよ……そして、サンドウォームにのるの楽しそうだなと……

今月の29日にこの作品の二巻が発売されますので、よろしくお願いします。


表紙はアーサーとガウェイン、マリアンヌとなります。


よろしくお願いします

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>二人の会話を聞いているアーサーのほほを冷や汗が流れる。え、それってまずくない? だって、絶対俺のせいじゃんと……自分が暴れたので砂漠の民が危機に陥っているのである。 >そう自分の中で言い訳をしたアー…
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