【紙コミックス発売記念SS】謁見の間○○○だらけ事件1
いつもお読みいただきありがとうございます!
紙コミックスが本日発売のため記念SSです。
これはアホなコメディーとなっております。繰り返します。アホなコメディーです。
アホなコメディーを三夜連続でお届けします。
「え、もう一回言って?」
「エリアス王太子殿下と国王陛下が発熱です」
「兄上が熱出すなんて今までなかったんじゃない? 食あたり? 昨日食べた牡蠣?」
「あなたも同じもの食べてるんでしょーが。発熱と咳のみで腹痛や下痢などはありません。酷い風邪ですね」
「へぇぇぇ」
真面目な顔をしたゼインが知らせに来た時、エリーゼとアシェルは一緒にいた。
「へぇぇぇではありません。問題なのは明日の謁見です。王太子殿下の側近の方々もてんやわんやですよ」
「ふぅん?」
「ふぅんでもありません」
「父なんて発熱しても公務してるのが自慢だったじゃないか。よく自慢してるじゃない。これだけしんどくても動くんだって」
「今回は咳がお二方とも出ているので、謁見は難しいかと。流行っている病もありますから不安を生むでしょう」
「じゃあ謁見は中止?」
「それがそうもいかないのです。スチュアート殿下がやらかした後に謁見を中止したとなると……しかも遠方の領主が出向いてきているので」
アシェルは普段通りだが、ゼインは渋面だ。
「でも、僕が出るのもねぇ。相手が納得しないでしょ」
「えぇ、そこは残念ながら。陛下あるいは王太子殿下が対応しないと……どうしても下に見られたとか、王家はこの領地を軽んじているとか言われますね」
「母上も政治面はだめだからねぇ。スチュアートにやらせたら?」
「冗談はカエルとトカゲとヘビだけにしてください」
「え、あれは冗談じゃないよ。本気の趣味だよ。仕事より本気」
「仕事は本気でやってください」
明日の謁見に国王陛下と王太子が出てこれないのが問題になっている。
「気合で治してもらう?」
「気合で治れば文句はないのですが。王太子殿下の方が咳は軽めです」
「僕が変装しようか?」
「あのキラキラ感を出すのはなかなか難しいですね。それに体格が王太子殿下はがっしりしていらっしゃるので」
「ゼンが後ろでなんかキラキラしたもの撒いてて」
「バレたらまずいですよ」
「じゃあ影武者できそうな誰かいない?」
話が変な方向へと転がっている。
「急病と表明するのはだめなんですか?」
私はなんとなく口を挟んでしまった。
「お二人とも急病となると、またいろいろ言い出す輩がいますので」
「宰相と母上はどうかな」
「やはり陛下か王太子殿下がいないと」
「じゃあもうここは宰相と母上と僕とスチュアートで」
「脇役寄せ集め、やめてください」
「人数で誤魔化そう。大臣も入れてさ」
残念ながらスチュアートのやらかしが各方面で尾を引いている。
「遠方から来たというと、すぐ帰らなければいけないんですか?」
「いえ、数日は猶予があります」
「あ、ならこれがいいんじゃない?」
アシェルの出した案は突拍子もないものだった。
「これしかない。謁見の間が使えなければいいだろう?」
「他の部屋でやればよくないですか?」
「大丈夫だ。カエル嫌いな人たちを集めて最初に対処に当たらせればより騒ぎが大きくなる」
「いや、それは問題でしょう。むしろ大問題になるのでは」
「そうか? イナゴの大量発生ならぬカエルの大量発生なだけだ」
「そもそも謁見の間でカエルが大量発生すること自体があり得なくてまずいのでは」
「庭から連れてくればいいよ。窓あけとけば大丈夫。トカゲも入るだろうし」
確かに庭にはアシェルが放したカエルが増えているが……。
「問題になって父上と兄上が事態を収拾するために忙しいことにして、母上と宰相と僕あたりで話を聞く。なんとかならないかな。それか、緊急事態ということで一日潰して翌日までに兄上に気合で治してもらう。潰れた一日は視察できそうなところに行ってもらうのはどうかな。観光してもらってもいいし。奥方と子供へのお土産代くらいはこちらで出そう」
ゼインが考え込んでいる。
え、まさか検討してる? そ、そんなに策がない? 本気で?
「ちょっと伝えてきます」
ゼインは頷くと出て行ってしまった。
「う、うまくいきますか?」
「二人の体調不良を知られたくない、謁見も中止できない、代役も立てられないとなれば謁見を上回る事件を起こすしかないだろう?」
謁見を上回る事件とは……カエルなのだろうか。
「戦争起こすわけにもいかないし。兄上が他国の王女と婚約してることでいろいろ言う貴族がいるんだよね。側室を自国の令嬢からとれとかさ。あとは、謁見の間を水浸しにすることも考えたけど修繕費用がバカにならないから」
「水浸しはさすがに……腐りますね」
「そうなんだよ。だから、間をとってカエル。つまり、謁見の間カエルだらけ事件。それなら僕が謝ればいいから」
「間をとってカエルって……」
ツッコミどころしかない。うまくいくの?
「何か他にアイディアある?」
そう聞かれて答えることができなかった。




