【書籍発売記念SS】ガールズパワーは相変わらず
いつもお読みいただきありがとうございます!
これで完結となります。
続きはまた別のタイトルで書き進めていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ナディアの結婚式を控えたアルウェン王国にて。独身を惜しむかのように女子会は連日開催されていた。
「まさかフライアの婚約がこんなに早く決まるなんて! 私、候補者を用意していたのに!」
「知らせを聞いた時はびっくりしたわ。手紙を十回くらい読み直したもの」
クロエとブルックリンは興奮気味だ。アルウェン王国に来てから結婚式ムードにあてられたのかテンションがやたら高い。
「私は現場を見ていた兄から聞いたけど信じられなかったわ」
「でも良かったわ。これでみんなブレスレット騒動や独身を返上できるわね」
「そうね。元婚約者にもハッキリ言いたいこと言ったし。やっとあの騒動に一区切りついた気がするわ」
エリーゼは目撃者である兄から話を聞いていたがいまだに信じられない気持ちだ。結婚式を数日後に控えたナディアが一番落ち着いている。
五人の中で最後まで婚約者が決まらず、やさぐれ気味だったフライアは、今はもうすっきりした表情だ。
ブレスレット騒動では、婚約破棄宣言などはなかった。ギリギリ大事件には発展しなかったものの、騒動は当事者だった彼女達の心に確実に影を落としていたのだ。フライアの言葉で他の四人もそれを改めて自覚し、その影がやっと取り除かれたことを認識した。
「ハウゼン伯爵令息だったっけ? 元婚約者のイライジャ・ストーンを殴ったんでしょ? それを見て感動してフライアが女王様のようにプロポーズしたのよね? 私の騎士におなりなさいって感じで」
クロエはフライアと婚約者の馴れ初めに目を輝かす。
「え? 違うでしょ。私が聞いた話では……フライアが殴ろうとしたのを止めてハウゼン伯爵令息がプロポーズしたんでしょ? あなたの美しい手を傷つけるわけには……とか言って」
「なんでそんな暴力展開になってるのよ。どっちも違うわよ。アートはそんなキャラじゃないから」
フライアのプロポーズ話は尾ひれや背びれがついて広まっていた。
「きゃあ、アートだって! フライアが婚約者を愛称で呼んでるわ! 乾杯しましょう!」
「ワインがないわ。紅茶で乾杯ね」
「ちょっと! 本名はどこかの王子と被るから嫌なのよ!」
「だってぇ、あのストーン侯爵令息の時は全然そんな素振りなかったじゃない」
「超特急の婚約だったから何か裏があるのかと思ってたけど、フライアが幸せそうで良かったわぁ」
クロエとブルックリンで散々フライアの馴れ初めを聞き出して盛り上がる。
確かに超特急の婚約だった。一連を目撃して婚約書類まで整えたエリーゼの兄クリストファーは「今までの仕事の中で一番早い」などとぼやいていた。
「結婚式はいつなの?」
「エリーの結婚式の後かしら。準備が間に合わないもの。さすがに王太子殿下の結婚式の後になるのは規模が違いすぎて嫌だわ」
「最初の結婚式はブルックリンだったわね。ナディアの式が終わったらクロエで、次が私で、フライアが最後ね」
「結婚式オンパレードね。学園を卒業したらこんなものなのかしら」
「うふふ。楽しみ。みんな、子供が生まれても交流しようね」
「クロエのことだから子供同士結婚させようなんて言うかと思ったわ」
「あ、それは良い考えね!」
「気が早すぎるわよ!」
毎日女子会をしているのにまたきゃあきゃあと盛り上がる。
エリーゼもナディアとそっと微笑み合った。
この後はまだ決まっていないエリーゼのウェディングドレス案をなぜか皆で出し合って揉めることになる。
「絶対これが似合う」だの「うちの領地の水晶は絶対ヴェールにつけて!」だの「パレードやるならもっと豪華なドレスに!」だの「それよりアシェル殿下にも聞かないと!」だのエリーゼを放置してものすごい熱量だった。
その熱量のおかげなのか、ナディアの結婚式は晴天に恵まれた。




