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後日談:ロレンス視点

お読みいただきありがとうございます!

「未来の王妃様は聡明でいらっしゃいますねぇ。いや、ザルツ王国の王太子が優秀なのですかねぇ」


側近の言葉に答えずにグラスに入った酒を煽る。


「誓いのキスが酒臭くなるのでそろそろやめた方がいいですよ~」


「やかましい」


「おぉ、怖い。そんなちょっとバレたからって怖い顔をしないでください」


「あの女を生かしておいたのがまずかったのか」


「う~ん、でもあの母親役の女は他国に出していますし、常時監視をつけています。その必要があれば殺しますが、特に報告すべき点はないですね。間に何人も人を入れましたしねぇ。研究所行きになった少女の方は何も知らないので、はて、どこから漏れたのでしょうかねぇ」


この側近ダラスは、目つきは鋭いのに喋り方が間延びしているせいで緊張感がない。


「まぁ、未来の王妃様も他国による実験と思っていらっしゃるようなので良いではありませんか~。厄介なのはあの王太子ですかねぇ~。でも、出来のあまりよろしくなかった弟を他国に出せますし、戦争を仕掛けてもいいことはないので何も言わずに終わらせる気もしますけどねぇ。あちらの第3王子がしっかりしていれば未然に防げた部分もありますしねえ~。ちょっとばかし教育が行き届いてないというかぁ、自業自得なとこもありますから~。第2王子は引っかからなかったわけですし~」


はぁ、ほんとにこいつは緊張感がない。幼いころから一緒にいるが、緊迫した場面でいつも脱力させられる。しかも、言っていることは事実な分、聞き流せないから質が悪い。いや、助けられたことも多々あるのだが……。

酒をさらに注ごうとすると、瓶を取り上げられてしまった。


「ほんとに結婚式での誓いのキスが酒臭いのはやめてくださいよぉ。結婚式は女性の夢なんですから、壊さないであげてください。なんたってあなた様の結婚相手は、あなた様が幼少期から初恋を拗らせまくったお相手なんですから~」


ムッとした顔で頭の悪そうな喋り方をするダラスを見ていると、今度はグラスを取り上げられた。


「ま、あの王太子が魅了のブレスレットについて国外にも公表したのが計算外でしたが。確固たる証拠は握れないようにしてありますので、大丈夫でしょう~。あなた様が首謀者だなんて誰も分かりませんよ~、思いませんよ~」


確かにあれは計算外だった。ザルツ王国のエリアス王子は国内で起きた一連の出来事を秘匿するだろうと予想していた。なんたって、自分の弟も絡んだ問題なのだ。

それがフタを開けてみれば、エリアス王子は魅了のブレスレットの存在と、自国で起きた王族をも巻き込んだ事件を国外に公表し、協力を仰いだ。

内容はザルツ王国ではこういうことが起きたから、他国にも同様の事件や文献などないかとの問いかけだったが……。

そうすると遠方の国が「うちの国にも魅了の瞳という文献がある」と回答し、共同研究のようなことを立ち上げるらしい。そのうち貿易なんかも始まりそうだ。

どの国にも黒魔術や禁術や呪いなどのおとぎ話や伝説は少なくとも1つはある。そしてそれらが本当なら、どこの国もそんなもので国政をかき乱されたくない。

エリアス王子は王家の醜聞を上手く利用したのだ。


「お酒は終了です~。さぁさぁ、明日は朝から式のお支度があるのでさっさと寝てくださいよ~。夜這いはかけてもいいですが、酒臭いので絶対嫌われると思います~。せっかく危ない橋を渡ってまでゲットした女性なんですから大事に大事にしてあげてくださいねぇ」


高い酒なのに、グラスの中身を捨てながらダラスは言う。


「ホント、うまくいってよかったですねぇ」


ダラスはニヤッと笑うと水を置いて、夜の闇に消える様にいなくなる。

残されたロレンスは不機嫌に水を飲みながら、さっきナディアに囁かれた言葉を反芻する。


「私を手に入れるためにロレンスがこれまでの流れを仕組んでくださっていたらいいのにって思ってしまいますわ。ふふふ。こんなバカなことを考えてしまうなんて。明日は結婚式ですから浮かれているのかもしれません」


ナディアの元婚約者であるスチュアートとは何度か面識があった。あいつは昔から愚かだった。最高の女性が婚約者なのに、それに気がつかない。大事にしない。

その最高の女性がさっきまで自分の腕の中にいたなんてまだ信じられない。

愚かなスチュアートとの結婚だけは阻止したかった。ナディアはあいつと結婚しても絶対幸せになれない。この計画をスタートした当初は彼女が自分の横に立つなんて想像もしていなかったが。


思ったより長くなってしまいました……ロレンス視点は再度アップしたいのですが、次はフライア視点です。

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