後日談:ナディア視点2
ナディアの1人語りです。
我が国の王太子殿下から聞いたお話によると、あのブレスレットは他国から来たようですの。
証拠でございますか? あの王太子殿下ですから何かしら掴んでいらっしゃるでしょう。私には証拠が何か教えてもらえませんでしたから。
ふふ。私は結婚式で誓うまではナディア・バイロンですわ。明日からはナディア・アルウェンになります。だからまだ、わが国と言えばザルツ王国ですわ。
ルルはあのブレスレットを貰ってからずっと身に着けていました。
取り調べでは「幸運のブレスレットだ」と言っていたそうですわ。貰った時にそう言われたし、ルルはアレを手に入れてから男爵令嬢になれて、いろんな男性と仲良くなれたんだと。笑ってしまいますよね。当事者のルルは何も知らなかったなんて。
ルルの母親ですか? もちろん探しましたわ。ハドスン元男爵が一度だけ関係を持ったらしい平民女性ですわね。おかしなことにルルの母親は、ルルがハドスン男爵家に引き取られてから忽然と姿を消しているのです。ハドスン元男爵もお酒が入っていたのかその女性と本当に関係があったのかきちんと覚えていらっしゃいませんでしたし。
え? そんな朧気な記憶ならなんでルルを引き取ったのか? そうですわよね。いくらルルの母親と名乗る女性がルルを連れて屋敷に来て、元男爵の懐中時計を見せたからといって引き取るのは不用心ですわよね。懐中時計は盗ませればいいわけですから。しかもその母親はルルを元男爵に引き取らせてから姿を消しているなんて、よく出来ていますわ。この辺りもブレスレットの力なのでしょうか。
近所の方々に聞き込みをすると、ルルの母親は娘は養女にしてもらえて、自分はハドスン元男爵の屋敷の離れに住まわせてもらえると言っていたそうですわ。
でも、元男爵が責任感から母親も屋敷に引き取ろうとしたところ、母親はその申し出を固辞したそうですわ。「住み慣れた場所から離れたくない」と言って。
こうなってくると、ルルとその母親が本当に血縁関係にあったかも怪しいですし、何よりもルルと元男爵の血縁関係も眉唾ものです。
ここからが私の推論なのですが……
あのブレスレットは確かに呪いのような力を持つ装飾品なのです。
他国のものと仮定してお話しますが、あのブレスレットの力がどれほどのものか分からず、その国も持て余し気味だった。国内にあると問題を引き起こしかねない。
そこで、他の国で実験しようと考えたのですわ。
ルルの母親を送り込み、ハドスン元男爵と関係があるように見せかけて、ルルを本当にその女性が生んだのか……どこかから攫ってきたのかは分かりません。
そしてルルにブレスレットを持たせて貴族の令嬢たち、令息たちが集まる学園に送り込んだのですわ。
学園とそこに通う未来の貴族たちを使った壮大な実験と考えたら……面白いですわね。
事実、王族や高位貴族の婚約は私を含めて4件なくなりました。
それで……え? 冒険物語を最近読みすぎじゃないかって?
うーん……確かにそうかもしれませんが……だってこの国の冒険物語は面白いんですもの。ついつい夜更かしして読んでしまいますわ。まぁ! 私の推論を聞いてくださると言いながらあなたはそんなに笑って。酷いですわ。ちゃんと聞いてくださると言ったのに。
えぇっと、どこまで話しましたっけ?
お読みいただきありがとうございます!




