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後日談:ナディア視点1

お読みいただきありがとうございます。

ナディア視点です。

窓を少し開けると夜風が心地いい。ザルツ王国よりも生温い風が頬を撫でる。

ほぅと息を吐きながら、明日の結婚式に思いを馳せた。

ここまで長かったような短かったような。スチュアート殿下との婚約がなくなってからがとても濃密だった。アルウェン王国に来てからの勉強や人脈作りもなかなかに大変だった。クロエやフライア、そしてエリーは元気だろうか。


ぼんやり窓の外を眺めていると、後ろから肩に手を回されて抱きしめられた。

馴染んだ香りが鼻をかすめたので緊張することはない。


「僕の花嫁は結婚式前夜に窓から逃げ出すつもりかな?」


微塵もそんなことを考えていないくせに。逃がすこともないくせに。

くすくす笑いながら後ろから強く抱きしめられる。


「考え事をしながら涼んでいただけですわ」


窓に映る現在の婚約者、明日には夫となる人物の顔を見ながらちょっと肩をすくめた。


「何を考えていたのかな? 僕の花嫁は」


「知りたいですか?」


「ナディアのことなら何でも知りたいよ」


キザなセリフを吐きながら、王太子ロレンス・アルウェンは私の髪を掬いあげて口付ける。


「距離が近すぎませんこと?」


「明日は結婚式だ。ちょっとくらいいいだろう。お目付け役もガタガタ言わないさ」


ロレンスは私の首筋に顔を埋める。くすぐったくて思わず首をすくめた。


「魅了の呪いのブレスレットについて。考えていました」


「君の元婚約者が影響を受けたっていうアレのこと?」


ロレンスが顔を上げ、窓に映る私と視線がかち合う。


「はい」


「あれがどうかしたの? 研究所で研究されてるんじゃないの?」


「ええ。それはそうなのですが。あのブレスレットはどこから来たのかとずっと不思議に思っていまして」


「ふぅん? それはあの女を尋問して分かったんじゃないの?」


「ルルは貰ったと言っていたそうです」


「それは怪しいねー」


興味がなさそうにロレンスはまた首筋に顔を埋めた。


「私の推論があるのですが聞いてもらえますか?」


「もちろん。いいよ」


ロレンスの言葉を聞いて、私は今度はゆっくり息を小さく吸った。

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