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ナディア様はスチュアート殿下に絡まれたその日のうちに抗議文を王宮に送り、翌日には謁見の約束をもぎとった。


陛下はアルウェン王国の次期王妃となるナディア様を無碍にはできない。そんな陛下はスチュアート殿下をもう学園に行かせず、ナディア様の目の前に現れないようにすると提案したようだが……。

隣国に婿入り(出荷)前に学園で友人達と交友を深めたいだろうから、そのかわり自分に飛び級試験を受けさせて欲しいとナディア様は要求したのだ。

昔はあったが現在は廃止されてしまった飛び級試験。



「これ以上殿下に迷惑をかけられたらたまらないわ。私は他家のご令嬢たちと交流してるけど殿下はルルに構ってたから他の令息達との交流が疎かになってるもの。出荷前にきちんと交流して婿入りしても国の役に立ってもらわなくっちゃ」


ナディア様は謁見が済み、飛び級試験の許可をもぎ取った後で私の様子を見に我が家に来て気だるげに話す。


「王宮で仕事と勉強だけじゃ生温いのよ。殿下に都合がいいだけじゃない。学園で針の筵をもっと味わっていただかないと」


交流云々は建て前で本音はこっちのようだ。ナディア様の気持ちはよく分かる。

王宮でも他人の目は冷たいだろうが、学園ではルルとのいちゃつきやナディア様への態度が知られているからもっと冷たい。


「あなたもフライアもクロエも飛び級試験を受けられるようにしておいたわ。良かったら一緒に頑張りましょう」


ナディア様は最後にさらっと爆弾発言をして帰って行った。


そしてそれから1カ月後、私たちは猛勉強の末、飛び級試験を受けることになる。

卒業まであと1年と少しだったから、この飛び級試験を受ければほとんど学園に通わなくていいのが大きい。つまり合格すればアシェル殿下の学年と一緒に卒業することになる。飛び級試験という名の卒業試験のようなものだ。

私にとって婚約解消後に学園に通う日数が少なくて済むのはメリットが大きかった。ルルの時に好奇の目に晒されたが、婚約解消後もその類の目にまたしばらく晒されるからだ。

クロエ様も新しい婚約者が決まり早く卒業して結婚したいと飛び級試験を受験した。

フライア様は自分の父親の粗探しと婚約者候補を見つけるのに忙しいのでかなり悩んでいたが、結局試験を受けることにした。


猛勉強の末、4人とも試験に合格して通常より1年早く学園を卒業した。


そして現在、私は領地の1つにやって来て領地経営を学んでいる最中だ。

ナディア様はそろそろ嫁入りのために隣国に向けて出発すると手紙が来た。私がいる領地にも途中で寄ってくれて滞在する予定だ。



「そろそろ書類のチェックは終わった? 夕食の時間よ」


「あ、はい。先ほど終わりました……お母様」


まだまだお母様という言葉を出すのは慣れない。

現在私は母のいる領地で、母のもとで領地経営を学んでいる。


いつもありがとうございます。

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