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お読みいただきありがとうございます。


兄クリストファー視点のお話になります。

妹が新しくドレスを仕立てる気になったらしい。

帰宅早々、執事のオズワルドが知らせてきた。

妹は婚約者のザカリー・キャンベルとのことでかなり悩んでいるようだったが、これで少しでも気が晴れるならそれでいい。


浮気を考えているようだが良いと思う。どこからを浮気と思っているか知らないが、節度を守って上手いことやってくれたらいい。他の男に目を向けるのも大切だ。男が皆ザカリーのような奴ばかりではない。それにすっかり暗くなってしまった妹に女性としての自信を取り戻して欲しい。


父はあんなゴタゴタがあってもキャンベル侯爵家との婚約を破棄しなかった。いや、出来なかったというべきか。

家同士が絡む取引のこともあるし、侯爵家跡取りであるザカリーとの婚約を逃すとエリーゼに今後まともな縁談がくるかは怪しい。

エリーゼはうちを継ぐ訳ではないからどこかの家に入る事になる。ザカリーとの婚約はかなり良縁だ。同等のものを、すでに周囲のめぼしい家は婚約者が決まっている今から探すのは実質不可能だ。


2人はお互い恋をしている訳ではなかったが、特別不仲でもなかった。婚約者としての礼節は守っていた。


「まさかザカリーがあんな女に引っかかるとはね」


自室の椅子に座り込みながら書類で酷使しすぎた目頭を押さえる。

全く、呪いとかめんどくさい。うちの妹になんていうことを仕出かしてくれたのか。家格が上でなければ殴っているところだ。

いや、もちろん、妹にも多少落ち度はあったと思う。でも、妹を責めることは出来なかった。


「うちの親がアレだからねぇ……」


両親は政略結婚だ。

結婚生活を送っても特に情が芽生えることもなかったらしく、母は自分と妹を産むと義務は果たしたとばかりに早々に1番遠い領地に引っ込んでしまった。

今ではそこの領地経営を楽しくやっている。ごく稀に訪ねていくとちゃんと迎えてくれるが、母が子供達を訪ねてくることはない。

自分はまだ母との記憶があるが、エリーゼは皆無だろう。侍女のメリーがほとんど親代わりだ。エリーゼが領地の母を訪ねたことはない。


父も父で別に愛人を作るわけでもなく、ひたすら仕事をしている。

父と母は結婚相手というより仕事のパートナーだ。そして2人とも家庭を作るには何かが欠落していた。


母以外の家族で集まってディナーを取っても仕事や業務連絡以外の会話はない。父は勉強の進み具合などをいくつか質問して自分が食べ終わるとすぐに席を立ち、執務室に戻って行く。


そんな両親を見て、そして両親との関係が希薄な中で妹はグレずに頑張っていたと兄の欲目で思う。

内向的な妹が苦手な手紙をザカリー宛に月に2回は書いていたし。キャンベル侯爵夫人とも頑張って仲良くしていたし、侯爵家に嫁ぐのだからと勉強やマナーにも必死で取り組んでいた。


兄としてはあんなことがあったので、嫁がずに母のように領地にいてくれても構わないと思っている。

父が許すかは分からないが。

妹は体調を崩すくらいだし、この婚約について迷っているのだろうが、今後の縁談等のことも何となく分かって立場を弁えて言わないのかもしれない。

あの女の事をネタにザカリーをずっと尻に敷くほど妹は強かではないし。


「あー、権力欲しいなぁ」


伸びをしながら呟くと寝る前の酒を持ってきてくれたオズワルドに呆れられた。


「王太子殿下の側近が何を仰いますか」


「殿下は人遣いが荒いだけだから。権力あればさぁ、妹の婚約なんて今すぐ解消にできるのになって」


エリアス殿下に上手いことできないか聞いてみようか。でも笑顔で大量の仕事を振られそうだし、もし次の婚約者としてアシェル殿下を薦められても困る。

妹はヘビはOKだが、カエルはダメだ。トカゲはどうだっけ?

どこかに良い令息が余っていないだろうか。


「親父、いますぐ隠居しないかな」


「まだまだ、旦那様はお元気ですよ」


「ちっ。お兄ちゃんは無力だ」


何か良い方法はないかと模索しながらお兄ちゃんは酒を一杯だけ呷った。

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