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クローバー(1)  作者: ディライト
第3章
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第3章―(2)

 あれから一葉と放課後に携帯を買いに行くも、以前と同じ携帯じゃないと怪しまれるのではという事で、前と同じ緑の携帯を探しにショッピングモールハナオカへ赴いた。しかしハナオカでは目的の物は見つからず、わざわざ電車を乗り継いで花岡町よりも栄えている隣町まで行くこととなった。三軒目にしてようやく同じデザインを見つけ、帰ってきたのが二十一時過ぎ。流石に腹を空かせた二葉と三葉に叱られてしまった。学校が終わってすぐに向かったのにものすごい時間が掛かるあたり、やっぱり田舎だなあとしみじみ思う。まぁ俺は都会のごみごみした所よりよっぽどいいと思うけどな。

 

 そして火曜日の放課後。昨日の遠出で買い溜めも済ませてしまい、いつもの買い出しも必要ないため、帰ってくるとさっさとラフな格好に着替えて夕飯の用意までだらだらと過ごし始める。二葉と三葉は夕方のアニメに食い入るように夢中になっている。俺は休日の親父のように、横向きに寝転がり手の平を枕にしながら週刊誌を読み耽る。そして一葉はというと……、

「えへへへへ〜」

 何やら購入した携帯を四方八方から眺めながら、気持ち悪い声を発し嬉しそうにしていた。顔の整いすぎてるパーツも福笑いのようにズレさせて、畳に座布団を二枚敷き、ごろ寝しながら悶えている。本当に携帯を持っていたのか些か怪しいところだ。なんか新しい玩具を買って貰えた子供みたいになってるぞ。

「はっ! そうだ!」

 何かを思い出したように、携帯が入っていた箱を漁る。取り出したのは説明書だ。

「メールメールっと……」

 どうやらメール送受信の操作方法を調べているようだが……知らないのかよ!? 前の携帯で葵に送ったことないのか?

「よ、よーし送信! えいっ!」

 どうやら初メールを送ることに成功したらしい。嬉々として鼻歌を交えながら敷いた座布団からも外れ、ごろごろと畳を転がっている。すっかりうちの生活にも慣れたらしい。メールはきっと今日学校で五人とアド交換した誰かに送ったのだろう。本命葵、対抗花咲、大穴で佐久間ってとこだな。筑紫は……うん。

 pppppppp……

 俺の初期設定から変えていない着信音が鳴り出した。あれ、俺にもメールが……。

 どうせ筑紫辺りがイタズラメールしてきたんだろ。俺は食卓テーブルに発哺ほっぽってあった携帯に手を伸ばす。

 

『差出人:一葉 タイトル:やっほー(^O^)/ 本文:きょうのゆうはんなにがいい(?_?)』

 

「俺ここ! ここにいるよ!?」

 思わず立ち上がってしまう。

 一メートルも離れてない距離でメールとか斬新だな! もはや送受信する電波が勿体ないよ!

 しかも漢字変換はできていないのに、顔文字だけはしっかり付いている。

「ハルキ届いた!?」

 一葉も同時に立ち上がると嬉しそうに俺の携帯を分捕る。

「自分が送ったメールを人のケータイで自分で見てどうする!?」

「えへへ〜見て〜、アドレス帳が溢れんばかりだよ〜」

 俺のツッコミも届かず、一葉は更に自分の携帯のアドレス帳を一生の幸せ分の笑顔で俺に見せ付けてくる。溢れんばかりっても五人だけどな。まぁ一葉が大層喜んでいるのでいいか。

「飯は任せるよ。材料たくさんあるし」

「うん、おっけ〜!」

 夕方なのに眩しい笑顔でグッドサインを出すと、「よーし、今度は一斉送信をやってみよ!」などとまた説明書を読みはじめた。

 

 pppppppp……

 少し経つとまた俺の携帯が音をたてる。

 

『差出人:佐久間恵介 タイトル:事件だ 本文:碧原から「碧原です!」というメールがきてしまった! どうする?』

 

 RPGの戦闘シーンのようなメールをよこしたのは佐久間だ。事件って大袈裟な。お前は一体この事件になんて名称をつける気なんだ。どうするも何も「佐久間です!」って返しておけばいいんじゃなかろうか。俺はその旨を一言で返信してやった。すると一分も掛からずにメールが帰ってきた。

 

『差出人:佐久間恵介 タイトル:佐久間です! 本文:ってハルキが返しておいてくれ』

 

 俺は草野です! どこの世界に自己紹介を他人に押し付ける奴がいるんだ。しかもメールで。やはりどこか抜けている奴である。あいつ最近一葉と関わってからおかしすぎるぞ。

 佐久間のアホメールは無かったことにしてそのまま閉じて、俺は再び雑誌に目を向けようとするが、またまた俺の携帯は無機質な着信音を響かせる。

「今度はなんだ…?」

 こんなにメール来るのは初めてだな。嬉しい反面だんだん面倒臭くなってきたぞ。

 

『差出人:枝村葵 タイトル:しくしく(/_;) 本文:最近スーパーきてくれないね(>_<)もしかしてハナオカに浮気しちゃったのかな?? ……って店長が泣いてたよっ!』

 

 葵からだった。というかどんだけ客いないんだよ。まぁ店長とは顔馴染みだし、常連だった俺がしばらく顔出さないとなると売上もだいぶ削られている事だろう。

 現在五時過ぎ。一葉と三葉はいつの間にか夕飯の支度を始めたようだし、二葉は連続でやっている次のアニメを見ている。ちなみに夕飯の用意を手伝わない二葉は朝のゴミ出しと風呂洗いという専用の持ち場がある。どうせ暇であるし、ちょっくら顔出ししてくるのも悪くないか。まぁ何も買わないんだけど。

 なんとなく重い体を無理矢理起こして、一葉達が調理している台所を通り玄関に向かう。

「ヒトハ、ちょっくら出てくるわ〜」

「どこ行くの?」

 スーパー南田って言うのも変だな。

「散歩だ」

「……ハルキ散歩好きだよね」

「……なんだよ?」

「なんか町を徘徊してるおじいさんみたい」

「ほっとけ!」

 一葉は可笑しそうにクスクスと喉を鳴らす。

「ふふ、門限七時だよ」

「りょーかい」

 一葉に告げて、俺は適当にジャケットを羽織って家を出た。太陽はリフレッシュタイムに入る寸前で、もうすっかり夜という感じだ。俺はマイ自転車を一階のアパート住人兼用倉庫から引きずり出してサドルに跨がる。よく考えてみれば一葉たちがきてからこの自転車にも乗っていなかった。

「さみしかったか?」

 試しに聞いてみても相変わらず壊れそうな音しか出してはくれなかった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 暗い坂道を慎重に降りて、木造建築の薄気味悪い学校前を通り過ぎ、後はだんだん街灯も増えて直線を突き進むだけ。久しぶりに降り立ったスーパー南田の駐車場は相変わらず一、二台しか停まっていない。俺は自転車を一台も停まっていない駐輪場に停めて、スーパー南田の自動ドアをくぐった。

「……しゃいませ〜」

 相変わらず買い物籠の整理をしているチャラいお姉さんが今にも寝てしまいそうな表情で慣用句を読み上げる。入って早々こんな店員がいたらそりゃ客も回れ右だろう。俺は愛想の悪い店員を一瞥してから、直ぐにレジへと向かった。確かこの時間は店長もレジにいるはずだ。

「お〜! ハルくんじゃあないかっ! あたしのラブコールが実を結んだようだねっ!」

 レジに向かう前に葵と遭遇した。葵は相変わらず制服姿に極太フォントの南田エプロン姿だ。きっと学校から直行で来ているのだろう。どうやら床を拭いているようで、モップを片手に仁王立ちする姿はさながら如意棒を握る孫悟空のようだ。

「ラブコールって。あ、店長いる? 久しぶりに挨拶しとこうと思ってさ」

「店長ならあっこで死んでるよっ!」

 葵は死人を指す時のテンションではないテンションで死んでいるという店長を指差す。その先には生気を抜かれたミイラのように、レジの台に頭だけ乗せてぐーたれている店長の姿があった。

「て、店長うっす……」

 声かけづれー! 近付くとそこはお化け屋敷なのではと錯覚するような空気だ。店長は俺の声に反応して壊れかけのブリキの玩具のように顔をあげる。

「ぉ……ぉ……ぉぉぉおおおおお! 草野くん! 帰ってきてくれたのか!」

 まるで裏切った仲間が戻ってきてくれたかのように目に光が戻る店長。

「君が最近来てくれないから、店の売上がさっぱりだったんだよ! いやぁ〜助かった! 生き返ったよ!」

 店の売上問題を俺に一任されても。これはちょくちょく買いに来てあげないと店長過労死しそうだな。あ、働いてないから過労死はないか。

「でも店長今日は買いにきたんじゃなくて、久々に挨拶しようと……」

 と俺が零すと同時に再び頭を垂れる店長。どよんとした黒い靄が背中に見えるようだ。

「スンマセン! ここには新鮮な野菜や魚もたくさん入るし、惣菜も総じて美味だから来たいのは山々なんですけど、色々理由が重なってここにはなかなか顔出せないんす!」

「はは、わかってるよ草野くん……。君もお年頃だ。こんなクソみたいなスーパーなんかより、目の前のビッグでクールなショッピングモールで女の子なんかときゃっきゃうふふしたいもんな……」

 あながち間違ってないから反論できない。あまりに俺の最近の行動を的確に当ててくるので俺は苦笑いするしかない。まさか店長見てたんじゃないだろうな。店長は死んだ魚のような遠い目で外に見えるハナオカを眺めている。

 店長は見た目も実際も三十代。未婚。背がとても高く百九十センチ以上はあるだろうが、現在はかなり小さく見える。人当りがよく、とても愛想がいい。かなりの量のあごひげは人の良さを一層醸し出していて、太っていたらサンタクロースになれるだろうという風貌である。

「ハルくんハルくん、もうバイト終わるから一緒に帰ろうよっ!」

 店長に憐れみの苦笑いを送っていると、葵が右手をあげて宣誓するように言う。

「お、おお。んじゃまた外で待ってるよ」

「おっけー! おーしラストスパートだああ!」

 葵は嬉しそうに最後の仕事を終わらせに向かった。

「……うん、そうだ、それがいいよ。はいこれ、ハナオカのカフェ半額券。存分に使ってくれて構わないよ……。若いモンは若いモン同士で、適材適所があるんだよ……」

「あ、あざっす……」

 店長は後ろに疫病神でも付いているかのような表情で、ハナオカの半額券を差し出す。アンタこれハナオカで買い物しないと貰えない奴じゃん。店長絶対ハナオカ結構行ってるでしょ。

 俺は店長の好意(皮肉か?)を仕方なく受けとって、入口前で葵を待つことにした。

 

 待つこと五分。葵がエプロンを剥ぎ取って「おーまーたーせー!」などと叫びながら跳ねるようなステップでこちらに向かってくる。

「お疲れ、ほらよ」

 俺は労いの言葉を掛けて、買っておいたコーヒーを差し出す。

「――わたしにかい?」

 葵は驚いたようにコーヒーを見つめる。

「あ、コーヒーダメだった?」

「う、ううん! ありがと〜!」

 くすぐったそうにはにかんで、コーヒーを受け取る葵。頬を赤らめて笑う葵に思わずドキリとさせられる。俺達はまたいつぞやのように、俺は自転車をひきながら、葵は徒歩でそれぞれ進み出す。

「ハルくんあのさ……」

「ん?」

 葵は何かを言いかけて、少し躊躇うように俯く。

「どした?」

 再び続きを促しても、葵は迷うようにその言葉の先を出そうとしない。

「ん〜……なんていうかさ……」

 葵はちらちらと上目遣いでこちらを伺って、またすぐに目を逸らしてしまう。

「相談でもなんでも話せよ。友達だろ? 俺ら」

 前に葵と南田帰りに宣言されたものを引き出す。

「うん……そ、そうだね……。さ、最近さ! 一葉と……そう! 最近仲良いよね!」

「え? あ、ああそうだな……」

 急に一葉の話を振られて若干焦った。何やら花咲にはもろもろばれてそうな感じではあるし、葵にも筒抜けなんじゃないだろうな。

「なんていうか……さ、一葉と……付き合ってるの?」

「ブッ!」

 思わずコーヒー吹いちまった。

「ちょい! ハルくん大丈夫!?」

「ゲッホゴッホ! つ、付き合ってはねえよ!」

「―――『は』……か」

 コーヒーが気管に入ってつい口が滑ってしまった。何やら葵が呟いた気がしたが、俺の耳には入ってこない。

 というか、そもそも何故隠さなければならないんだ? よく考えてみれば学校に公にならなければ友達くらいになら話しても大丈夫な気がするけど……。葵は、むせた俺の背中を優しくさすってくれている。

「ん〜なんつうかな……」

「い、いいんだよ! 友達同士でだって隠し事はあるしっ! …………でもね、」

 明るく振る舞う葵の表情は自嘲するように苦笑いに変化する。

「辛いことがあったのに、相談してもらえなかったっていうのは……ちょっと堪えたかなっ! へへ……」

 膝元でぶら下げている学校鞄をぼけっと蹴飛ばす。

 葵が気にしているのは一葉が溺れたってことになっている件についてだろう。俺はその件に関与していることになっているし、最近の一葉の様子から大体察していたのかもしれない。

「そう! きっとこれは嫉妬なんだよっ! ……なんだかさ、最近一葉を取られちゃったみたいに感じるんだよ……」

 俯きながら感情を道路に吐き捨てるように話す。心なしか歩くスピードも緩めている気がする。

「あたしさ、一葉にはたくさんたくさんたーっくさん感謝してるんだよね」

「……馴染めない一葉の近くにずっといてくれたのはおまえじゃないか」

 葵は俺の言葉に足を止める。

「ちがうよ、ちがう、ちがうんだ。そうじゃないんだよ」

 そして、雑念を振り払うように頭を振る。

 掌で負の感情を包むように握る。

 スチール缶を持つ手も震えている。

「……何がちがうんだ?」

 俺は平淡に問う。

 葵は答えないで、ただ俯いている。下の道路に答えを探すように。

「……うん、秘密だよ、これは」

「――それじゃ、堂々巡りだな」

 ひたすら考え抜いて出した答えはシークレットだった。

「へへ、ごめんね。でも、これだけは言わせて……」

 葵はそう零すと、ようやく垂れ下げていた顔をあげ、

「一葉のピンチを独り占めしないで欲しい。気づいているのに助けることができないのは……辛いんだよ」

 暗い背景にも咲かせるその花は、とても弱々しく儚いものだった。鈍感な俺にも、葵のいつもの、俺の知っている葵の笑顔じゃない事はすぐにわかった。葵の話からは葵が抱いている一葉へのただならぬ想いはよく見えない。ただ葵も一葉の幸せを願っている。心から。それは痛いほどに伝わってきた。

 でも俺はすぐに答えを告げることができなかった。一葉との共同生活のこと、一葉が火事被害に遭ったこと、その他ここ一週間のこそこそとした行動のこと。総ては俺も一葉の、そして二葉と三葉が楽しく豊かに幸せに暮らせればいいと思っているからの行動だからだ。俺にとっても一葉達に関して、あの日から人事ではなくなったから。

 そう思ってた。

 でも、違うのかもしれない。

 同級生の、しかも男子生徒の元での同居なんて、一葉にとって本当に幸せなことではない。こそこそと世間に公になるのを恐れて友達にも嘘をつき続ける毎日なんて息苦しいだけだ。葵に総ての事情を説明して、一葉たちを匿ってもらえばいい、そう思った。それで総て上手くいく。俺の脳はそう指令を下した。

 はずだった。

 しかし俺の気持ちは声となって出ない。喉をコルクの栓で蓋をするように、声にするのを何かが拒んでいた。胸の内に渦巻くもやもやとした気持ちがさらに追い討ちをかける。

「――あはは、まぁそんなに考え込まないでっ! 気が向いたらでいいから教えてね!」

 様子のおかしい俺に気を遣うように会話を切る葵。気付けば別れの交差点に差し掛かっていて、葵はコーヒーのお礼を置いて、素早い猫のように暗闇と人込みに消えていった。

「はは……なんだろな」

 俺は誰に問うでもなくひとりごちて、自転車に跨がった。

 誰も答えてはくれない。

 自分にもわからない。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ただいま……」

「あ、お帰り〜。もうそろそろ夕飯できるよ」

 我が家と外を繋ぐドアを開くと、食欲をそそる匂いが俺の鼻と胃袋をくすぐる。一葉はお味噌汁用のお玉を持ち上げて、可愛いらしく出迎えてくれた。一週間前には有り得もしなかった光景だ。そして三葉はというと、何やら真剣そうにフライパンと睨めっこしている。

「……よし……! あ、ハルキおかえり……」

 どうやらオムライスを作っていたようで、綺麗な楕円で鮮やかな黄色がフライパンの上で完成されていた。包むのに成功すると三葉もこちらに顔を向け、オムライス同様鮮やかな、それでいて控えめな笑顔をくれる。

「ん、ただいま……」

「……あれ? なんか元気ない?」

「え、あ、そんなことないぞ!」

 我ながら芝居の才能はない。俺はボディビルダーのように腕をあげて空元気を見せる。

「あ、もしかして卵半熟の方がよかった?」

「え、ああ、いや……」

 どっちつかずの曖昧な答えに少し首を傾げる一葉。

「半熟は私も三葉も作るの苦手でさ〜。失敗して中途半端になるのもヤだったから普通のにしちゃった」

 ぺろっと舌を出して悪戯に笑う。

「――半熟なら俺作れるけど…………今度作ろうか?」

「ホント!? じゃあじゃあ! 半熟卵にハッシュドビーフかけたやつがいい! 前に一度だけ三人で食べに行った事あって、すごく美味しかったの!」

「レストラン級までにはいかないけどな」

 一葉は最高潮に嬉しそうに、先ほど三葉が巻き上げたオムライスに温野菜を添えている。

 

 ――今度作ろうか?

 

 きっと作る機会はもうないだろう。そしてこのわいわいがやがやとした温かな夕食の団欒もなくなるだろうし、夕食後の語らいの一時もなくなるだろう。

 でもそれでいいのだ。最初からこの生活には無理があったんだ。一葉も次の所が決まるまでと言っていたし、葵にお願いすれば断るわけがないのだ。

 そう、俺はそれまでの代理。

 今日で俺の役目はおしまい。

 

 和室のテーブルには豪勢な温野菜添えオムライス、中央には取り分けのサラダ、コンソメスープのおまけつき。彼女たちのとびっきり特製料理も今日で食い納めだ。

 この時間ぐらいはこれからのことを忘れてもいいよな?

 

「おっしゃー! うまそ〜! 食うぞ〜!」

「ハルキ急に元気になったね」

「こんな上手そうなもん目の前にして元気ない奴がいたら、俺が張っ倒しちまうぜ!」

 俺の言葉に三葉は頬を染める。


「じゃあ……、」 

『いただきま〜す!!!!』

 

 

 

 第3章―――完

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