97 酒だ酒だ酒だーっ!
晴れてティモンに『人材育成機関』の島に行くことを了承させたエウフロシネは華麗に包丁を使いこなしていた。
「あら、エウフロシネちゃん!」
「早いね~」
「もう~、張り切っちゃって、可愛いんだから~」
「エウフロシネちゃん。荒くれ海の女たちはみんな貴方の味方だからね」
「応援してるよ~」
荒くれ海の女たちの熱烈なエールに、エウフロシネは笑顔で応える。
◇◇◇
その陰で一人佇むティモン。
だが、状況はティモンをセンチメンタルに浸ることを許してくれなかった。
「ティモン~。聞いてくだせぇよ~」
「ティモン~。うちの女房、朝からエウフロシネにつきっきりで、朝飯も作んねんですよ~」
「ティモン~。うちの女房、俺が獲った高級魚。エウフロシネのお弁当作りの材料にするって、まるまる一匹、持って行っちゃったんですよ~」
「ティモン~。うちの女房、俺の秘蔵の高級酒。エウフロシネのお弁当作りの調理酒にするって、まるまる一本、持って行っちゃったんですよ~」
「……」
荒くれ海の男から次々持ち込まれる苦情。
◇◇◇
バンッ
ティモンは目の前のテーブルを叩くと、勢いよく立ち上がった。
「わかった。おめえら、俺の家の応接から、飾ってある酒全部持って来いっ!」
「へいっ!」
「ツマミはなあ~。女衆がうちの台所、占拠しちまったから、おめえらの家から何か持って来いっ!この際、食えるもんなら、何でもいいっ!」
「へいっ!」
「エウフロシネを『人材育成機関』の島に送り迎えする奴以外は、今日は仕事はナシッ! 一日中、飲んで飲んで飲みまくるぞっ!」
「うおおおおーっ!」
「酒だ酒だ酒だーっ! 酒だ酒だ酒だーっ! 酒ださーけーだー!」
やけくその大宴会が開幕した。




