91 第四章プロローグ
「ふーん」
気のあるような、ないような素振りで、データを確認しているのはパウリーネである。
「こんな大学生に『学術研究惑星』の施設は潰されたんだ。なってないねぇ~」
「まあ、相手はレーザーガンとレーザーセイバーを持ってましたからね。普通じゃないですよ」
脇の秘書席に座って入力作業を続けているのは、先日、「星間警察」の施設に潜入した時、随行した従者である。
「やっぱ、こいつだね」
パウリーネは表示画面を右手の甲で軽くたたく。
「『ホタカ・スカイ。通称旦那さん』。『ビル・エル・ハルマート』で一名、『アクア3』で二名、『洗脳機関』の下士官を殺っている」
「……」
「『チャージオン』した時の攻撃力は、銀河最強レベルと推定される。むふふ。『チャージオン』した後、記憶喪失になる副作用があったが、理由は不明だが、克服の兆候が見られる。ほうほう」
「……」
「ねぇ、ルカイヤちゃん。旦那さん、あたしにちょうだい」
ルカイヤと呼ばれた女性秘書は、うんざりした表情で答える。
「何度も申し上げますが、標的は本部が決めるので、軍団に決める権限はありません」
「そこを何とかしてよー。ねぇ、『敏腕美人秘書』」
「はあぁぁぁ」
ルカイヤは大きな溜息をついた。
「まあ、軍団が『偵察局』対応の事案を任されたら、当然、相手方の最強者とはパウリーネ様が対峙することになるでしょうが」
「期待してるよーん。むふ。むふ。むふふ。銀河最強レベルかぁ」
「パウリーネ様。よだれが出ています。年頃なんだから、しっかりして下さい」
「あ、それは大丈夫。だって、あたし、ルカイヤちゃんをお嫁さんに貰うから」
ルカイヤは真っ赤になって、絶句した。




