85 一緒に助けに行こう
周囲から大歓声が上がり、その声で坊っちゃんは目を覚ました。
眠い目をこする坊っちゃんにエウフェミアは言う。
「坊っちゃん。旦那さんが勝ったんだよ。一緒にエウフロシネちゃんを助けに行こうっ!」
坊っちゃんの眠気は一瞬で吹っ飛んだ。
「うん。行こうっ! エウフェミアさんっ!」
「わ、私も行きますっ!」
アナベルもついて行く。
◇◇◇
最後のフロアは広々としていたが、片隅に3つだけ小さな個室があった。
これが敵の指揮官の言っていたVIPルームだろう。
睡眠でやや精神力を回復した坊っちゃんは次々にレーザーブラスターで施錠を破壊して回る。
アナベルは一つずつ、ゆっくりと扉を開けて行く。
そして、三つ目、最後の扉を開けたとき……
◇◇◇
いた!
「エウフロシネちゃんっ!」
エウフェミアはヴァーチャルリアリティマシンにがんじがらめに固定されたエウフロシネに飛び付く。
そして、力技でその凶悪なシステムを取り外そうとする。
だが、強力に固定されたシステムは容易に外れない。
「うっ、うぐっ、うぐぐぅっ~」
内部で戦っているであろうエウフロシネが呻き声を上げる。
「大丈夫、大丈夫、エウフロシネちゃんっ! あたしだよ、エウフェミアだよ。坊っちゃんと一緒に助けに来たんだよ」
エウフェミアはエウフロシネを力の限り、抱きしめる。
「うっ、うっ、ううーうっ」
エウフロシネは呻き声で答えようとする。「お姉ちゃん」と言っているのだろうか?
「エウフェミアさんっ! そのまま、エウフロシネちゃんを支えていてっ! 行くよっ!」
ドウッ
坊っちゃんはヴァーチャルリアリティマシンに向かい、レーザーブラスターを放つ。
エウフロシネは一瞬ビクリと体を反り返した後、気を失った。
◇◇◇
「エウフロシネちゃんっ! エウフロシネちゃんっ!」
エウフェミアはエウフロシネを抱きしめ続ける。
坊っちゃんはレーザーブラスターで配線を一本ずつ焼き切って行く。
少なく見ても数十本はありそうで手間のかかる作業だ。
そのうち、エウフロシネに固定されていたゴーグル、マスク、ヘルメットなどが次第に取り外せられるようになっていき、拉致された時のエウフロシネが姿を現した。
坊っちゃんは右手でエウフロシネの額に触れ、そっと、前髪をかき上げてみた。
そして、にっこり笑うと、静かに言った。
「大丈夫ですよ。エウフェミアさん。極度の緊張が急に解けたので、安心して気を失っているだけです」
エウフェミアはエウフロシネを抱きしめたまま、号泣した。




