79 全身サイボーグになったって帰ってくるよね
「チャーーージィーーーオーーーンッ」
旦那さんの叫びと共に、白い光柱が立ち昇る。
敵の指揮官は白い光に溶けて行く。
敵の指揮官は今わの際に「よし、これでいい」と呟いたが、それは旦那さんの耳には入らない。
その後は、辺りを朦朧とした一人のむさい男が徘徊するといういつもの光景が広がって行った。
◇◇◇
「シナン君っ! これは一体?」
坊っちゃんを背負い前に進むラティーファは、担架に乗せられ後送されるシナンとすれ違った。
「敵の指揮官と戦い、重傷を負ったのです。近隣の惑星の『医療班』を呼んで、治療させます」
「星間警察職員」が答える。
「えっ? 大丈夫なの?」
あわてるラティーファに、「星間警察職員」も悲痛な面持ちで答える。
「分かりません。でも、全力を尽くします。それより、ラティーファさん」
「何?」
「まだ、当初の目的であるエウフロシネさんの救出が達成されていないのです。ご心配はわかりますが、ここは我々に任せて、現場に向かって貰えませんか?」
「分かりました」
ラティーファは坊っちゃんを背負いながら、先を急いだ。
(シナン君はきっと大丈夫。「ビル・エル・ハルマート」の時も助からないと言われていたのに、帰って来たんだから。今度だって、全身サイボーグになったって、帰って来るよ)
そう、自分に言い聞かせながら。
◇◇◇
シナンが負傷した現場では、残った「星間警察職員」と「偵察局員」がやはり奥にある鉄扉をどのように開けるか協議していた。
三人の敵の指揮官は倒したことを確認できたが、他に敵の正規兵や狂信的暗殺者がいない保証はない。
また、下手に乱暴に鉄扉を破壊すると、それこそ中にいるエウフロシネにケガをさせることになりかねない。
辛うじて最低限の精神力を残していたエウフェミアに頼み、レーザーブラスターでドアノブを破壊して貰った。
四つ目の鉄扉はゆっくり開けられた。




