77 こんなんなっちゃいました
「ラティーファッ!」
坊っちゃんがあらん限りの声を張り上げる。
ラティーファも敵の指揮官も思わず振り返る。
「ラティーファは何のために戦ってるの? 殺されそうになったこと、エウフロシネちゃんを拉致されたことへの怒りもあるけれど……」
「……」
「それだけじゃないでしょ? 何のために、こんな苦しい戦いを戦っているの?考えてみてっ」
(そうだよ……)
ラティーファは考え出した。
(こんなに苦しい戦いを戦っている理由? 「洗脳機関」への怒り……それもある。でも……)
(そうだ。あたしは、旦那さんに追いつきたい。旦那さんと同じ目線で、色んなことを見てみたいんだっ!)
ラティーファはレーザーセイバーを大上段に振りかぶった。
レーザーセイバーは眩いばかりの光を放った。
「ぬおっ」
敵の指揮官は思わず掌で眼を覆った。
ラティーファはレーザーセイバーを大上段に振り上げたまま、敵の指揮官に向けて、力強い足取りで突進する。
「チャーーージィーーーオーーーンッ」
ラティーファから雄たけびが上がる。
◇◇◇
白い閃光が立ち昇る。
「おっおっおっ、ラティーファっ!」
坊っちゃんは驚愕の声を上げる。
(ええっ? 「偵察局」関係者だって「チャージオン」使えるの旦那さんとシラネだけだよ……)
白い閃光はゆっくりと消えてゆく。
◇◇◇
「おっ、おんな~っ」
敵の指揮官は左半身が壊死した状態で、辛うじて立っていた。
パスッ
次の瞬間、坊っちゃんがレーザーブラスターを放ち、敵の指揮官はその場で倒れて行った。
「はあっ、はあっ」
坊っちゃんも座り込んでしまった。
◇◇◇
「大丈夫? 坊っちゃん」
ラティーファが駆け寄る。
「おっおっおっ、ラティーファこそ、『チャージオン』して、何ともないの?」
坊っちゃんの問いに、ラティーファは笑顔で答える。
「うん。不思議なんだけど、旦那さんみたいに、今までやっていたこと忘れちゃうとか、シラネさんみたいに、何が何でもあっちの方向に行かないとという衝動もないの、ただね……」
「ただ?」
「こんなんなっちゃいました」
ラティーファが笑顔で見せたレーザーセイバーの「柄」は、見事なくらい「く」の字に曲がっていた。
素人目にも、もうこれは使い物にならないだろうと思えるレベルである。




