73 すぐ 通してもらおうか
シナンが次の鉄扉のドアノブをレーザーガンで壊した時、ゆっくりとその扉を開けたのはアナベルだった。
その先には、やはり一人の敵の指揮官がいた。
シナンが静かに語りかける。
「三人目、最後の指揮官だね? 人質はどこにいる?」
「ふっ」
三人目の指揮官も冷笑する。
「この先にいるはずだ。精神を潰されて、死んでいなければな」
シナンの言葉に怒気が含まれてくる。
「なら、すぐ、通してもらおうか」
「通れるものならな」
三人目の指揮官がレーザーセイバーを中段に構える。
レーザーセイバーを持ったアナベルがゆっくりと前に出る。
(さっきは怖気づいて、ラティーファさんに先に出て貰っちゃったけど、今度は私が行かないと)
敵の指揮官がアナベルに気を向けた隙を突き、シナンが敵の指揮官にレーザーガンを発射する。
だが、敵の指揮官は、こともなげに、レーザーセイバーを一閃、光線を跳ね返す。
「むうっ」
シナンは唸る。
「うおおおおーっ」
今度はレーザーセイバーを振り上げたアナベルが敵の指揮官に向かい、突進する。
「ふんっ」
敵の指揮官は、受け止めると、レーザーセイバーごとアナベルを弾き返す。
「くっ」
アナベルは後ずさる。
「ふっ、最低限の戦闘訓練は受けているようだが、超心理学技術がまるで分かってないな。そんな弱い光では犬の子一匹殺せまいよ」
敵の指揮官の言葉に、アナベルは思わず下を向き、うつむく。
◇◇◇
「アナベルさん。下を向いちゃ駄目だ。勝負はやってみなきゃわからないし、何としてもエウフロシネちゃんを助けましょうっ」
シナンの励ましに、アナベルはレーザーセイバーを構え直す。
「そうですね。私も『星間警察』の警官です。人を人とも思わない人を許す訳にはいきません」
アナベルのレーザーセイバーの光が少しだけ強くなり、もう一度、レーザーセイバーを振り上げ、敵の指揮官に突進する。
だが、これも簡単に弾き返された。
「……」
アナベルは後ずさりながらも、しっかり、レーザーセイバーを握り返す。
「ふっ、ふはははははっ」
突如、敵の指揮官は、高笑いを始める。
「何がおかしいんだっ?」
問うシナンに、敵の指揮官は、なおも笑いながら、答える。
「貴様らがあまりにも愚かだからよ」




