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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第三章 水の惑星Ⅰ

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72 勝負する気あるのかっ

 「ふんっ」

  敵の指揮官(コマンダー)は、軽く斬撃を加える。


 ラティーファは必死の形相で、それを受け止める。


 「やはりか……」

 敵の指揮官(コマンダー)の冷たい口調は続く。


 「戦闘訓練を受けていないな。超心理学的(パラサイコロジカル)技術(テクノロジー)で逆転を狙っているのか?」


 「……」

 ラティーファは何も答えない。


 いや、答える余裕もないのか。


 「みなさんっ!」

 坊っちゃんが呼びかける。


 「ここはラティーファ(お姉ちゃん)と僕に任せて、先に進んで下さいっ!」


 周囲はざわめく。


 「そんなっ! ラティーファさんが大変そうなのに、先になんか行けませんよっ!」

 エウフェミアは悲痛な叫びを上げる。


 シナンは静かに(うなず)くと、右手でエウフェミアの左肩をやさしく叩いた。

 「エウフェミアちゃん。ここはラティーファちゃんと坊っちゃんの好意に応えよう。何としてもエウフロシネちゃんを助けるために。アナベルさんと皆さんも一緒に来てください」


 シナンたちは脇をすり抜けるように次の鉄の扉に向かった。


 「ふっ」

 敵の指揮官(コマンダー)は小さく笑った。

 (予定通りだ……な)



 ◇◇◇



 旦那(だん)さんと敵の指揮官(コマンダー)の力勝負は長引いていた。


 旦那(だん)さんの心中には、ふつふつと怒りが湧き上げてきた。

 「おいっ、てめぇっ! 勝負する気あるのかっ?」


 「何を言うか。たった今、勝負をしているところではないか?」

 敵の指揮官(コマンダー)は、しれっと返した。


 「そっちからは一切攻撃せず、こっちが撃ち込めば、力勝負にして長引かせる。どういうつもりだ?」


 「どういうつもりも、こういうつもりもない。我々は常に勝つために最も合理的な選択をしているだけだ」


 「くっ」

 旦那(だん)さんの焦燥感は増していく。


 それに伴い、レーザーセイバーの光も鈍くなっていくようだ。


 (これが狙いか。セイバーの光を弱くして、戦闘力を下げる。いや……もっと他に何かある気もする)



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