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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第三章 水の惑星Ⅰ

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70/230

70 えっ、そんなことまでしたんですか

 中では70代くらいの男性だろうか、頭部にはヴァーチャルリアリティシステムが装備されている。


 坊っちゃんたちの侵入に気付くと、男性は怯えたように飛びのく。


 そして、あわててヴァーチャルリアリティシステムを頭部から外そうとするが、うまく外せない。


 「星間警察職員」が羽交い絞めにし、別の「星間警察職員」が外そうとするが、やはり外れない。


 坊っちゃんはおもむろに近くにあったシステムの機械をレーザーブラスターで破壊する。


 すると、ヴァーチャルリアリティシステムはようやく外れ、脱力した状態の男性が残された。



 ◇◇◇



 「な、なんだ? あんたたちは?」


 「他の島から来た者です。すぐにこの施設から逃げて下さい」

 坊っちゃんの呼びかけに、男性は力なく答えた。


 「この島には逃げるところなんかないよ。逃げてもすぐにここに連れ戻されちまう」


 「! 貴方は望んでここに来たんじゃないんですか?」


 「とんでもねぇっ! 誰がこんな地獄に望んで来るかよっ!」

 男性は吐き捨てるように言った。


 「宜しければ、何があったか教えて貰えませんか?」


 男性はゆっくり話し出した。



 ◇◇◇



 「ヴァーチャルリアリティの施設が出来たのは、どのくらい前だったか。何でこんな田舎に来るのか不審に思ったけど、大枚はたいて土地は買ってくれるし、凄い儲かる施設だって言うから、うちの島長(しまおさ)が受け入れを決めちまった」


 「……」


 「ところが、始まってみれば、儲かるのは施設の連中だけで、俺らには全然回って来ねぇ。逆に施設に通いつめる奴がたくさん出てきちまった」


 「……」


 「施設の利用料は高い。だから、通いつめる奴は制限量を遥かに超えて、魚を獲れるだけ獲って、売りまくった。そうこうするうちに魚も獲れなくなっちまった」


 「ああっ、それで」


 「魚が獲れなくては、稼げない。普通ならそういう奴は施設に行っても門前払いの筈なんだが、あそこは受け入れた。体力のある奴は、あそこの兵隊になり、そうでない奴は……」


 「……」


 「二度と帰って来なかった。噂では、人でない化け物にされ、戦わされて、みんな、死んで行ったという話だ」


 「……」


 「もともと人の少ない島だ。そんなことをしていれば、施設に通う奴は誰もいなくなる。そうしたら、施設の奴らは、わしら通わなかった人間を無理矢理施設に連行し、ヴァーチャルリアリティマシンにかけた」


 「ええっ? そんなことまでしたんですか?」

 坊っちゃんは驚愕した。


 「ビル・エル・ハルマート」でも「戦争犯罪」と言われるほどの凄惨さがあったが、それでも、ヴァーチャルリアリティマシンにかかるか否かは、あくまで自由意志だった。


 「わしらは、仲間と語らって脱走したこともある。だが、兵隊はまだしも、あの指揮官(黒い奴)は信じられない程強い。わしらは全員ぶちのめされ、連れ戻された」


 「……」


 「二度目の脱走の時は、抵抗するのを止め、隠れることにした。ところが、あの指揮官(黒い奴)はどこに隠れても見つけてしまう」


 「……」


 「だから、この島はもうこの施設の他に人はいないんだよ。逃げても無駄なんだ」


 「逃げて下さい」

 坊っちゃんは力を込めて言った。


 「いや、逃げても無駄だって……」


 「あの指揮官(黒い奴)は、僕たちが倒します」


 「!」


 「だから、逃げて下さい。念のため『偵察局員』を護衛に何名かつけます」


 「わかった」

 男性は(うなず)いた。


 「お願いして悪いが、ここには、わしの他に無理矢理連れてこられた島の人間がたくさんいる。みんな、外から施錠されていて、逃げ出せない。全員、助けて貰えないか?」

 男性の願いに、坊っちゃんは笑顔で応える。


 「もちろんです」


 「あ、あの」

 ここでエウフェミアが前に出てくる。


 「この施設に、10歳くらいの女の子が連れて来られませんでしたか」


 男性は首を(ひね)る。

 「島中の人間が連れて来られたからね。そのくらいの年の子も見たかもしれん。ただ、あんたが捜している子かどうかはわからないよ」


 「わかりました。さあっ、どんどん部屋を捜しましょう」


 エウフェミアの提案に、一行は(うなず)いた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魚の取りすぎはダメですよね? (;'∀') まぁ……なんでも過度はダメなんでしょうが。 アフリカでも乱獲が問題になっていると聞きます。 皆で節度を守って生きていけばいいのかもしれませんね …
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