68 ちょっくら飛び降りて のしてくるわ
奪還は正攻法で行うと決まった。
旦那さんと坊っちゃんを捕縛する偽装をしてみせたところで、周りが「星間警察」と「偵察局」では、ばればれである。
また、前回の戦闘で、荒くれ海の男たちが捕らえた捕虜から、相手方の人数も狂信的暗殺者を除けば、30~40との情報を得ている。
戦えない数ではない。
船はかつて敵にやられたことをやり返すかのように、敵の島の船着き場に強行接岸する。
敵の正規兵は船着き場に集まった者から射撃を始める。
だが、その点については、船側には、射撃のエキスパート坊っちゃんがいる。
「星間警察職員」と「偵察局員」も射撃訓練は受けている。
射撃戦は船側が優勢に展開した。
◇◇◇
これはいけるかと思われた時、何人かの敵兵が船に駆け寄って来た。
(あっ)
その光景に坊っちゃんは見覚えがあった。
ラティーファも見覚えがあった。
あわてて坊っちゃんは、駆け寄って来る敵兵を次々射殺したが、一人を撃ち漏らした。
ズズズズズウゥーーーンッ
船は衝撃で大きく揺れた。
「なっ、何だ? 今のは?」
シナンが叫ぶ。
「敵のダイナマイト投擲攻撃です」
坊っちゃんが説明する。
「船は大丈夫か? 沈むのか?」
シナンの更なる質問には、
「ひょっとしたら、小さな亀裂が入ったかもしれません。浸水はするかもしれませんが、すぐには沈まないでしょう」
坊っちゃんは射撃しながら、冷静に答える。
◇◇◇
「ええぃっ! ちまちましたせこい攻撃ばっかしやがって」
船縁に立って、レーザーセイバーを振り回し、敵の弾丸を蒸発させてきた旦那さんは、頭に血が上りつつあった。
「ちょっくら飛び降りて、敵の指揮官のしてくるわ」
飛び降りようとする旦那さんを、シナンはあわてて止める。
「わわわ、旦那さんっ、ちょっと待って」
「旦那さん、それにみんな、20秒だけ時間を下さい」
シナンの頼みに旦那さんは、気軽に答える。
「ん、いいけど」
20秒後……
ズドンッ
シナンが最大出力に設定したレーザーガンが敵陣を襲う。
敵兵が最も多かったところに大穴が開く。
後ろから、敵の指揮官が飛び出し、撤収を指示する。
「おおぅっ! 敵の指揮官が出て来たっ! シナン君、サンキュー」
旦那さんは、意気揚々と船を飛び降りる。
「よぉーしっ! みなさんっ、 旦那さんに続きましょうっ!」
シナンも叫んだ。




