65 目を離すと無茶苦茶やりやがる
「話はまとまった」
急ぐ話とあって、シラネからのレスポンスも早かった。
「『大学』からはシナン、ラティーファ、エウフェミアの3名。『星間警察』からはアナベル以下5名。
以上の8名は今夜2000、『学術研究惑星』から定期便で『偵察局』本部のある『副都心惑星』に行ってくれ」
「はい」
「『副都心惑星』では、『偵察局員』20名と合流した上、武器の供与を受ける。『超心理学的技術を使った武器だ。くれぐれも紛失や奪取されようにとのことだ」
「はい」
「『副都心惑星』からミッドラント社製輸送機『ソーラ』に搭乗し『アクア3』に向かう。そんなに離れていないから、すぐ着くはずだ」
「はい」
「ミッドラントCEOが交渉してくれて、『帝国航宙軍』の戦闘機2機が護衛につくことになった。ミッドラント社製の『フランク』だ。護衛機は護衛任務終了後も『洗脳機関』の援軍が来ないよう哨戒してくれるそうだ」
「はい。そこまでやって貰えるんですか?」
「あたしも相当頑張ったからな。『アクア3』についてからは、旦那さんと坊ちゃんと相談して進めてくれ。現場は、あいつらの方が知ってるだろうからな」
「はい。シラネさん。いろいろ有難うございます」
「うん。ラティーファちゃん。あたしも出来るだけ早いうちに駆け付けるから、無理はするな。それからな……」
「はい?」
「あたしが改めて言うべきことじゃないが、坊っちゃんと旦那さんをよろしく頼む。あいつら、目を離すと、すぐ無茶苦茶やりやがるからな」
(やっぱり、なんだかんだ言って、兄妹なんだな)
ラティーファはそんなことを思った。
◇◇◇
一行は『副都心惑星』で武器を受領した。
と言っても、シナンとラティーファは既に持っている。背の低いエウフェミアはレーザーブラスター、警官だけあって鍛えられているアナベルはレーザーセイバーを供与された。
ほかの「星間警察職員」と「偵察局員」は手持ちの武器を使うことにした。その多くは銃である。
◇◇◇
一行を乗せた輸送機は、「アクア3」の大気圏内に突入していく。
「本当に『学術研究惑星』から、そんなに離れてないんだね」
ラティーファが呟く。
「そうでなかったら、大学に行かせて貰えませんでしたね」
エウフェミアは苦笑する。
やがて、輸送機は本格的に大気圏内に入った。
輸送機の小さな窓からも青々とした海が広がるのが見えてくる。
「きれい・・・」
アナベルはそれだけ言うと、絶句した。
「『青い惑星』かあ。本当にきれいな惑星じゃない。やっぱり、うらやましいよ。エウフェミアちゃん」
ラティーファの言葉に、エウフェミアは苦笑を続ける。
「外から来た人はみんなそう言ってくれますけどね。でも、中での生活は大変なんですよ」
「……」
「でも、それでも…… きれいですね。あたしの『アクア3』」




