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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第三章 水の惑星Ⅰ

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64 それは無茶過ぎるよ

「いや、それは無茶すぎるよ。坊ちゃん。」

 坊ちゃんを諫めた後、シナンは振り向く。


「ラティーファちゃん」


 「ん」

 シナンの呼びかけに、ラティーファは応じる。


 「危険なのに悪いけど『ビル・エル・ハルマート』で坊っちゃんと組んで、一人倒しているよね。お願いしたいんだ」


 「ん。怖いけど、やってみる。ただでさえ『洗脳機関』は許せないのに、エウフェミアちゃんの妹を拉致するなんて、もう許せないっ!」


 「よし。後は僕だが、正直、一人で敵の指揮官(コマンダー)と戦うのは、勝算が無さ過ぎる」


 「『ビル・エル・ハルマート』の時は、シラネさんと二人で倒したんだったね」


 「シラネさんが来てくれれば、文句ないけど、正直、今は一刻を争う。こっちまでくるのに時間がかかりすぎる。坊っちゃん、エウフェミアちゃんのお父さんはどうかな?」


 「ティモンさんですね。荒くれ海の男たちのリーダーですから、戦闘力はある方ですが、僕たちがエウフロシネちゃんの奪還に向かっている間、敵がこの島を別動隊で攻撃しない保証はありません。島を守る人も必要です」


 「そうか、ほかに誰かいないか……」

 思案するシナンに、ラティーファが意見を出す。


 「あと、ほかに頼りになりそうなのは…… アナベルさん!」


 「そうか、『星間警察』のアナベルさんか。あの人も指揮官(コマンダー)と戦ったことはないけど、あのやる気は買えるかも……」


 「あたしがシラネさん通じて『星間警察』と『ミッドラント財閥』の協力を頼んでみるよ。坊っちゃん、いったん、通信切るね」

 

 「あ、待って。ラティーファ(お姉ちゃん)。僕も『偵察局』に武器と人員を頼んでみる。後で結果を連絡しあおう」


 「うん。わかった」

 ラティーファが通信を切ろうとすると、エウフェミアが制止した。


 「待ってください。あたしも行きます。あたしの分も武器をお願いします」


 「え?」

 ラティーファは驚いた。


 「エウフェミアちゃん。戦闘したことないでしょ。大丈夫?」


 「戦闘したことはないです。それにとても怖いです。でもそれでも、拉致されたのは、あたしの妹です。『洗脳機関』にいいようにされているのは『アクア3(あたしの星)』なんです」


 「……」


 「いつまでもみなさんのお世話にだけなっていられません。あたしも行きます。エウフロシネ()を助けに」


 シナンはにっこり笑って(うなず)いた。


 「うん。僕たちも心強いよ。一緒に行こう」



 ◇◇◇



 シラネもさすがに指揮官(コマンダー)が相手と聞くと、自分が行くと言い出した。


 だが、「ビル・エル・ハルマート」は辺境中の辺境である。


 どうしても駆け付けるまで日数がかかる。


 エウフロシネに「洗脳」の危機が差し迫っている以上、シラネを待つ訳にはいかない。


 やむを得ず「ミッドラント財閥」経由で「星間警察」と「偵察局」に強い支援要請を出した。


 「偵察局」内部では、坊ちゃんも武器と人員の支援要請を出している。




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