63 決着をつけてやると息巻いています
エウフェミアの悲鳴混じりの声に、ラティーファは思わず声をかける。
「ど、どうしたの? エウフェミアちゃん」
「エウフロシネがっ、エウフロシネがっ、拉致されたって」
「ええーっ」
ラティーファからも大きな声が出る。
◇◇◇
そんな中、「アクア3」サイドから、次の通信が入る。
「すみません。エウフロシネちゃんのお姉さんですか? 僕、『偵察局』の坊っちゃんと言います」
「『偵察局』の坊っちゃんですか?」
エウフェミアの返しに、ラティーファは当然反応する。
「『偵察局』の坊っちゃん~? エウフェミアちゃん。スピーカーにして。全員で会話できるようにしてくれる?」
エウフェミアは、全員が会話できるように機器を切り替える。
「坊っちゃん。あたしだよ。ラティーファだよ。今、『アクア3』にいるの?」
「ラティーファ? あ、そうか! 学術研究惑星にいるんだっけ」
「そう。でっ、エウフェミアちゃんの妹が拉致されたって?」
「そうなんだ……」
坊っちゃんは声を落とした。
「僕がもっとよく、大丈夫だから、みんなと一緒に逃げててと言えば良かったんだ。言わなかったから、僕のこと心配して、逃げないでいて……」
「エウフロシネは、坊っちゃんを心配して、逃げなかったんですか?」
エウフェミアの淡々とした問いかけに、坊っちゃんは謝罪する。
「ごめんなさい。妹さんは必ず僕が助けます」
「いえ。坊っちゃん。謝らないで下さい。今、あたしは、エウフロシネを誇りに思っているんです」
「!」
「ちょっと前のあたしなら、坊っちゃんを責めたでしょう。ですが、今のあたしはそうは考えません」
「……」
◇◇◇
「それで、坊っちゃん」
ラティーファが話を変えてくる。
「敵はやっぱり『洗脳機関』?」
「そう」
「『洗脳機関』って、あの『ヴァーチャルリアリティマシン』の?」
エウフェミアの顔色が変わる。
「そうです。だから、一刻も早く助けないと洗脳の危険が……」
坊っちゃんも苦悩する。
「!」
絶句したエウフェミアに代わり、シナンが会話に加わる。
「坊っちゃん。僕だ。シナンだ」
「あ、シナンさん。お久しぶりです」
「ズバリ聞く。敵の指揮官は、何人だ?」
「エウフロシネちゃんのお父さんが捕虜に訊問したところ、三人だそうです」
「ふむ。そこに旦那さんはいるよね?」
「います。戦っていた敵の指揮官が途中で逃げ出したので、カンカンになって、怒っています。敵地に乗り込んで決着をつけてやると息巻いてます」
「ははは、相変わらずだな。頼りになりそうだ。三人のうち、一人は任せられそうだ」
「それは僕もそう思います。でも、今回のことは僕に責任があるので、後は僕が」




