59 つえぇ奴はいねぇかぁ
(やばいっ! ラティーファちゃん、旦那さんがらみのことになると、人が変わるわ)
シラネはあわてて話題を変える。
「まっ、ままま、まぁ。それより、どうだったんだ? 『洗脳機関』は?」
ラティーファは淡々と今回の経緯を語りだす。
徐々にシラネの表情も硬くなっていく。
「ふーん。砂の惑星のような発展途上星ばかりでなく、発展した学術研究惑星も狙うのか…… それじゃ、どこの惑星も安心できるとこはねぇなぁ」
溜息をつくシラネ。
「でも、今回のことで『星間警察』も本当に本腰を入れることになったみたいですよ。首都星系で活動されたことで、相当衝撃を受けたみたいで」
「『遅いよ』とも言いたいけどね。まぁ、あたしもミラー社長や|ミッドラントCEOを通じて、協力体制作ってみるわ」
その後、シラネはエウフェミアやマリアとも話した。
エウフェミアは、シラネの心配りに感動したし、マリアとは戦災からの復興について、長く話し込んだ。
シラネとマリアの長い話が終わった後、エウフェミアは「アクア3」に、もう一度、通信を繋いだ。
今度は相手が出た。
「あ、ティモン。何で、何回繋いでも、誰も出ないの?」
ティモンは疲れ切った声をしていた。
「エウフェミアか。大変なことになってな。実は……」
「ええーっ。そんなっ!」
◇◇◇
それは、旦那さんの予言通り、その日の晩にきた。
船着き場に着いた何隻かの船から、定石とおり、狂信的暗殺者を先鋒に上陸して来る。
「来やがったぜぃ~っ!」
見張り役の荒くれ海の男が、声を張り上げる。
「うぉっしゃぁ~っ!」
「ぶちのめしたるっ!」
続々と荒くれ海の男たちは、船着き場に駆けつけて行く。
その中には、
「つえぇ奴はいねぇかぁ? 俺が相手してやるっ! 出て来やがれっ!」
と叫びながら、鈍く光るレーザーセイバーを振り回す旦那さんの姿もあった。
島の別の浜では、荒くれ海の女たちが、次々子どもたちを小舟に乗せて、逃がしていく。
「さあ、みんな、早く舟に乗って」
「大丈夫。何でも『偵察局』とかいう、凄いところから来たのが、二人も味方してくれてるんだ。父ちゃんたちが勝つよ」
荒くれ海の女たちのリーダーは、何度も何度も確認した。
「全員乗ったね。最後の舟を出すよっ」
その避難用の幾つかの小舟に、女子供は全員乗った…… はずだった。




