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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第三章 水の惑星Ⅰ

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59 つえぇ奴はいねぇかぁ

 (やばいっ! ラティーファちゃん(この子)旦那さん(バカ兄貴)がらみのことになると、人が変わるわ)


 シラネはあわてて話題を変える。

 「まっ、ままま、まぁ。それより、どうだったんだ? 『洗脳機関(今回のこと)』は?」


 ラティーファは淡々と今回の経緯を語りだす。


 徐々にシラネの表情も硬くなっていく。


 「ふーん。砂の惑星(うち)のような発展途上星ばかりでなく、発展した学術研究惑星も狙うのか…… それじゃ、どこの惑星(ほし)も安心できるとこはねぇなぁ」


 溜息をつくシラネ。


 「でも、今回のことで『星間警察』も本当に本腰を入れることになったみたいですよ。首都星系で活動されたことで、相当衝撃を受けたみたいで」


 「『遅いよ』とも言いたいけどね。まぁ、あたしもミラー社長(亭主)や|ミッドラントCEOを通じて、協力体制作ってみるわ」


 その後、シラネはエウフェミアやマリアとも話した。


 エウフェミアは、シラネの心配りに感動したし、マリアとは戦災からの復興について、長く話し込んだ。


 シラネとマリアの長い話が終わった後、エウフェミアは「アクア3(スリー)」に、もう一度、通信を繋いだ。


 今度は相手が出た。


 「あ、ティモン(お父さん)。何で、何回繋いでも、誰も出ないの?」


 ティモンは疲れ切った声をしていた。

 「エウフェミアか。大変なことになってな。実は……」


 「ええーっ。そんなっ!」



 ◇◇◇



 それは、旦那(だん)さんの予言通り、その日の晩にきた。


 船着き場に着いた何隻かの船から、定石(セオリー)とおり、狂信的(ファナティカリー)暗殺者(アサシン)を先鋒に上陸して来る。


 「来やがったぜぃ~っ!」

 見張り役の荒くれ海の男が、声を張り上げる。


 「うぉっしゃぁ~っ!」

 「ぶちのめしたるっ!」

 続々と荒くれ海の男たちは、船着き場に駆けつけて行く。


 その中には、

 「つえぇ奴はいねぇかぁ? 俺が相手してやるっ! 出て来やがれっ!」

 と叫びながら、鈍く光るレーザーセイバーを振り回す旦那(だん)さんの姿もあった。


 島の別の浜では、荒くれ海の女たちが、次々子どもたちを小舟に乗せて、逃がしていく。


 「さあ、みんな、早く舟に乗って」

 「大丈夫。何でも『偵察局』とかいう、凄いところから来たのが、二人も味方してくれてるんだ。父ちゃんたちが勝つよ」


 荒くれ海の女たちのリーダーは、何度も何度も確認した。

 「全員乗ったね。最後の舟を出すよっ」


 その避難用の幾つかの小舟に、女子供は全員乗った…… はずだった。



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