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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第三章 水の惑星Ⅰ

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57 呆れた 自分たちでそうした癖に

 シナンがレーザーガンで大穴を開けた後方の壁から、赤みを帯びた眼をした人間が続々とその不気味な姿を現している。


 「資料では見てたけど、改めて見ると凄いですね。これ」

 アナベルは戦慄した。


 「こうなると、俺たちでも、制御(コントロール)出来る自信がねぇ。逃げさせて貰うからな」

 アナベルを捕縛していた男は、女と運転手を促し、逃げ出さんとする。


 「逃げるのは勝手だけど、僕らが最初に出入り口の鉄扉をぶち破って、その後、学生たちがビル(ここ)から逃走してから、どれだけの時間がたったと思う? 外はもう『星間警察』と『地元警察』に囲まれてるよ」

 シナンは冷たく言い放つ。


 「くっ」

 男は唇を噛む。


 「それでもっ! 俺は、あんな『人でなくなったもの』の相手をするなんざ御免だ。逃げるからなっ!」

 男と女と運転手は階段を上に向かって行く。


 「呆れた。『人でなくなったもの』だって。自分たちでそうした癖に」

 ラティーファは心底呆れかえった。


 一階から、怒号ともみ合う音が聞こえて来た。


 いよいよ、『星間警察』と『地元警察』がビルにまで、入って来たらしい。



 ◇◇◇



 「君たち、学生だね。こんなところで何をしてるんだ?」

 地下にまで降りて来た警官の問いに、シナンは赤みを帯びた眼をした人間たちを指差した。


 「説明は後でします。今はあいつらを退治しないと危ないですよ」


 「うわっ、何だ? あれは?」


 警官たちは初めて見る「狂信的(ファナティカリー)暗殺者(アサシン)に、恐怖した。


 「『狂信的(ファナティカリー)暗殺者(アサシン)ですよ。事前資料で見ませんでしたか?」

 アナベルは星間警察職員に言う。


 「あれがそうか、聞きしに勝る……」



 ◇◇◇



 「来ますよ。私に銃を下さい」

 アナベルの声に、一人の星間警察職員は手持ちの銃を渡す。


 アナベルは銃を真正面に構えると、狂信的(ファナティカリー)暗殺者(アサシン)を射撃し始める。


 同時にシナンもレーザーガンを撃ち始める。


 星間警察職員は、それを合図に、射撃に次々参加する。


 しかし、狂信的(ファナティカリー)暗殺者(アサシン)について、事前に知らなかった地元警察の警官たちは、茫然として、立ちすくむばかりだった。



 ◇◇◇



 警察が被疑者を射殺するのは、通常は最後の手段である。


 あくまで、最初は、生きたままの捕縛を目指す。


 従って、初めは相手の手や足を狙う。頭部は狙わない。


 そんな警察職員にとって、腕や足が千切れても、進んでくる狂信的(ファナティカリー)暗殺者(アサシン)は常識外の化け物だった。


 「な、なんだ、こいつら」


 「頭です。頭を狙って下さい。そうしないと止まりません」

 シナンの声に、ようやく星間警察職員は我に返る。


 「残念ですが、あれはもう人じゃありません。射殺するしかないんです」

 シナンの悲痛な叫びに、星間警察職員は頭部を狙いだす。


 だが、倒しても倒しても狂信的(ファナティカリー)暗殺者(アサシン)は次から次へ出て来た。



 ◇◇◇



 「一体、どれだけいるんだ? こいつらは」

 星間警察職員は叫ぶ。


 「それだけこの施設にうちの学生が餌食になったと言うことです」

 シナンが応じる。


 「馬鹿なっ! こんなものあちこちに作られたら、この惑星(ほし)、いや、この銀河帝国()は亡びるぞっ!」


 星間警察職員たちにも、疲労の色が見えて来た。



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