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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
最終章 後日譚

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228/230

228 後日譚 旦那さん

ガラスの向こう側の病室で昏々と眠る旦那(だん)さん。見守る者たちもみな疲れ切っていた。


 そこに神妙な顔をした医師が現れて、小さく頭を下げ、一言言った。

 「いよいよご臨終です。私どもの力及ばず申し訳ありませんでした」


 力なく崩れ落ちる見守る者たち。号泣するラティーファ、アナベル、エウフェミア、エウフロシネ。


 やがて、シラネが意を決したように立ち上がった。

 「みなさん、旦那さん(兄貴)を見守ってくれてありがとう。医師団の方々も全力を尽くしていただいて、お礼の言葉しかない。あたしからすると……」


 「あっ」

 「おいっ、あれっ」


 シラネの挨拶が終わらないうちに、見守る者たちはざわめき始めた。


 (何だよ。こっちの挨拶がまだ途中なのに……あっ!)

 

 振り返ったシラネの眼に入ったのは、病床からむっくりと起き上がり、ガラス越しにこちらを窺う旦那(だん)さんの姿だった。


 「馬鹿な。完全に生体活動を停止したはずだ」

 仰天する医師。


 だが、すぐに医師は冷静さを取り戻し、手元のマイクで旦那(だん)さんに呼びかけた。

 「もしもし、旦那(だん)さん。聞こえますか? 聞こえていたら、右手を振って貰えますか?」


 旦那(だん)さんは医師が右手と指示したにもかかわらず、笑顔で両手を振った。


 医師はコホンと咳払いをしてから、続けた。

 「はい。よろしいです。次はその部屋の音声が外に出るようシステムを切り替えますので、何かしゃべってみて下さい」


 「あ、あ」

 旦那(だん)さんは発声を確認してからしゃべりだした。

 「みんな~、久しぶり~。そんなにみんなで集まって何してんの?」


 見守ってきた者は、別の意味で力なく崩れ落ちた。


 ◇◇◇


 やがて、シラネは医師からマイクをひったくるように奪い取ると、旦那(だん)さんに呼びかけた。

 「旦那さん(兄貴)っ、てめえは生きてるのかっ? それとも、死んで化けて出たのかっ? どっちだっ!」


 「えーとね」

 旦那(だん)さんはおもむろに自らの右手で心臓の鼓動を確認した。

 「心臓は動いているみたいだね」


 「ふぅー」

 シラネは大きく溜息を吐いた。

 「生きているってことか。全く人騒がせな」


 「うん。ごめんね。姐御(あねご)


 次の瞬間、シラネは無言で自らのバッグを開け、中からレーザーセイバーを取り出した。


 それは煌々と輝いていた。


 「離せーっ、あたしが旦那さん(あいつ)の止めを刺す。旦那さん(あいつ)皇海家(すかいけ)の恥さらしだーっ」


 その時のシラネを止めるには大の男5人がかりが必要だった。




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