224 後日譚 坊っちゃんとエウフロシネ
ティモンは船を接岸させるなり、エウフロシネに突進する。
「エウフロシネちゃ~ん。お父さんだよ~」
「もうっ! お父さんっ!」
エウフロシネはそんな父を一喝する。
「お客さんを放り出してくるなんて、ダメでしょうっ! ほら、さっさとアナベルさんとオキニィさんをご案内してっ!」
「は~い」
ティモンはしゅんとしながらも、アナベルとオキニィを誘導する。
笑いを噛み殺していたアナベルだが、エウフロシネを一瞥すると、その表情は驚愕に変わった。
「エウフロシネちゃん?」
そこにはモデル体型の長身金髪美女がいた。
「アナベルさん。お久しぶりです」
「驚いた~。いくつになったんだっけ?」
「こないだ20歳になりました」
「そうだよね~。10年前だもんなぁ。『アクア3』で戦ったのは……」
「その時は10歳でした」
「うんうん。本当に可愛かった」
「今は?」
「美人さん」
「ありがとうございます」
エウフロシネは満面の笑顔になった。
「エウフロシネちゃん、坊っちゃんは?」
アナベルの問いに、エウフロシネは笑顔のまま答える。
「いますよぉっ、凄くカッコよくなったから、驚かないでくださいね」
「うふふ。それは楽しみだなぁ~」
◇◇◇
もとより「アクア3」にあった偵察局の訓練所は、坊っちゃんの手により整備された訓練学校に生まれ変わった。
今や坊っちゃんはその訓練学校の代表である。
エウフロシネに案内されて訓練学校に入ったアナベルとオキニィは目を見張った。
190はありそうな長身。黒髪細マッチョな見るからに好青年が訓練生を指導していたからだ。
「うん。いいですよ。もうちょっと気を入れてみてください。うん。もっと良くなりました」
「うーん。もうちょっと力を抜いて下さい。あ、ちょっと抜き過ぎかな?うん、それでいいです。随分、よくなりましたよ」
(カッコよくなっても、丁寧な教え方は変わらないんだな。私もああやって教えてもらったっけ)
アナベルは微笑んだ。
「懐かしいね」
寡黙なオキニィもぽつりと言った。
「そうだね」
アナベルも頷いた。




