223 後日譚 島長ティモン
二組の夫妻は、つかの間の邂逅を喜び、そして、別れを惜しんだ。
お互いがお互いの惑星を訪れた時は、どんなに多忙でも、必ず時間を作って会おう。
そう誓い合った。
「そう言えば、エウフェミアさんのお父さんって、有名な親バカでしょ?よく結婚して『ビル・エル・ハルマート』に行くこと許してくれたね?」
アナベルの質問に、エウフェミアは笑って答えた。
「妹のエウフロシネちゃんが、お婿さん引っ張り込んじゃったからね。お婿さん『アクア3』の恩人だからね。さすがのお父さんも何も言えないよ~。あっ! 『アクア3』にも行くんでしょ?よろしく言っといて」
「うん。必ず言うね」
◇◇◇
大統領夫妻は宙港までアナベル・オキニィ夫妻を送り、再度、長老が出迎えた。
長老は航宙機の搭乗口までアナベル・オキニィ夫妻を送った。
そして、最後に長老は言った。
「アナベルさん。ラティーファに会ったら、たまには連絡くれるように言ってくれないか。つまんない小さいことでもいいからと」
「アブドゥルさん。ご自分から連絡はしないんですか?」
「いや、わしからはこっぱずかしくて……」
(この人、80歳かあ。可愛いおじいちゃんだな)
アナベルはそんなことを思った。
◇◇◇
アナベル・オキニィ夫妻は最後の訪問地「アクア3」に降り立った。
ここで「偵察機関」と戦った10年前よりは設備が充実してきたようだが、「ビル・エル・ハルマート」と比べると、まだまだ、手つかずの自然が残っている気がする。
「まだまだ。伸びしろがあるってことだよ」
出迎えてくれた「島長」ティモンは豪快に笑い飛ばす。
さすがに10年前から見ると、腹回りに貫録が出て来たが、海の男ぶりは変わらないようだ。
「さあて、うちの自慢の娘と自慢の婿に会いに来たんだよね。二名様、船にご案内~」
アナベル・オキニィ夫妻を船に乗せると、ティモンは自ら操縦した。
「あの~、魚は獲れるようになったんですか?」
アナベルの質問に、ティモンは威勢よく答える。
「おうよっ、資源保全に基づく計画的な漁ってのやってるからね~。肉食魚も相変わらず獲ってるし、それに一部の島では養殖も始めたんだよ」
「え? 本当ですか?」
「おうよっ、おかげでだいぶ収入が安定してな。結構、普通の家でも子供を他の惑星の大学にもやれるようになった」
「良かったですねぇ」
「おうよっ、おう、見なっ! もう、目的の島だぜ。おっ、愛しのエウフロシネちゃんがお出迎えだ~」




