215 洗脳した連中はざまあだな
「旦那さんっ! 頑張れっ!」
また、誰かが言った。
「旦那さんっ! 頑張れっ!」
また、誰かが唱和した。
「旦那さんっ! 頑張れっ!」
また、唱和の輪が広がった。
「旦那さんっ! 頑張れっ!」
「旦那さんっ! 頑張れっ!」
また、いつしか大合唱になった。
だが、ルカイヤは思わず言った。
「パウリーネ様っ! 頑張れっ!」
言ってから、あわてて自らの両手で口を塞いだ。
シラネは笑顔でルカイヤの肩を叩いた。
「ルカイヤちゃん、いいんだ。それで。もうすっかり二人とも戦闘バカに戻ってるじゃねぇか。パウリーネを洗脳した連中はざまあだな。戦闘好きの根性が洗脳を撥ね返しちまうんだがら」
ルカイヤもルカイヤにしては珍しい微笑を見せた。
「はい。みなさんのおかげです」
だが、シラネはその後の思いは口にしなかった。
(後は…… 旦那さんとパウリーネの心身がもつかどうか…… いや、もってくれっ!頼むっ!)
◇◇◇
「来ますっ!」
ルカイヤがパウリーネを指差した。
見れば、パウリーネのレーザーセイバーは煌々と輝いている。
「旦那さんもチャージオンしそうだよっ!」
坊っちゃんも叫ぶ。
旦那さんのそれの輝きもパウリーネのそれに負けていない。
「よしっ!」
シラネは周囲に声をかけた。
「二人がチャージオンしたら、ラティーファちゃんは旦那さんを、ルカイヤちゃんはパウリーネを迅速に回収してくれっ! それと宙港から車を回しとけっ! 回収したら、すぐ車で宙港に行き、最寄りの救急病院のある惑星に搬送するんだっ! スピードが生死を分けるぞっ!」
「はいっ!」
ラティーファとルカイヤは大きな声で返事した。
「後のことは任せろっ! とにかくラティーファちゃんとルカイヤちゃんは、旦那さんとパウリーネの救急搬送を最優先しろっ!」
「はいっ!」
ラティーファとルカイヤは更に大きな声で返事した。
◇◇◇
旦那さんとパウリーネは互いに距離を取り、レーザーセイバーを大きく振り上げると、お互いに向けて突進した。
そして、完全にシンクロナイズした形で咆哮した。
「チャアァァァジイィィィィオオォォォンッ!」
その惑星全体を巨大な白い光が包んだ。
それは今までのどのチャージオンより長い時間晴れなかった。
殆どの者は目が眩み、開けてはいられなかった。
それでも2人の人間だけはカッと目を見開いていた。
ラティーファとルカイヤだった。




