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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第五章 要塞惑星

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214/230

214 周囲から愛されるケンカバカ

 シラネはアナベルに交代を伝え、アナベルがゆっくり後ずさりしていく脇を旦那(だん)さんは足早に駆け抜けていく。


 (やはり旦那(だん)さんが行きますか。危険と分かっていてもそれしか方法がない。残念です)

 アナベルは小さく溜息をついた。


 ラティーファは呟いた。

 「あーあ。旦那さん(あの人)駆けって行っちゃったよ。何だかんだで強い者と戦うのが好きな戦闘(ケンカ)バカなのかなぁー」


 「そうでもないぞ。ラティーファちゃん」

 シラネが宥める。


 「さっき、『狂信的(ファナティカリー)暗殺者(アサシン)』を旦那さん(兄貴)と一緒にシンクロ攻撃しただろ? ラティーファちゃんの力量も相当上がっていたが、旦那さん(兄貴)がかなりラティーファちゃんをうまくフォローしていた」


 「!」


 「旦那さん(あれ)はそういう気配りとか気遣いが一切出来ない奴だったんだよ。『アクア(スリー)』じゃ教官の仕事ほっぽり出して、魚獲ってたろ。ま、気配りとか気遣いはラティーファちゃんにしか出来ないんだけどさ」


 「どうして……」


 「?」


 「どうして今になってそんな話を始めるんですか? シラネさん。やっとやっと、気持ちを押し殺して、旦那さん(あの人)を送り出したのに……」


 (やっぱり無理していたか、20歳)

 シラネは黙って後ろからラティーファの肩を抱いた。



 ◇◇◇



 旦那(だん)さんはパウリーネとの打ち合いが再開されると、疲労の色も見せずにレーザーセイバーを振るった。


 やはり、少しは生来の戦闘(ケンカ)好きが救いになったのかもしれない。


 「あ、でも何だか……」

 戦況を凝視していた坊っちゃんが言う。


 「旦那(だん)さんとパウリーネさんの打ち合いなんだけど、パウリーネさんが洗脳される前のパターンに戻ってきたような……」


 アナベルも言う。

 「私も戦闘パターンが『とにかく相手を倒す』から『お互いの力を確かめ合う』に変わって来たように感じます」


 オキニィも言った。

 「パウリーネさんの眼を見て下さい。もう、赤みは全くありません」


 (旦那さん(兄貴)……)

 シラネは一人思った。


 (周囲から愛される戦闘(ケンカ)バカ。ふっ、あたしは一生かけても旦那さん(兄貴)にゃ勝てないわ)




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