209 少しだけって何だ 何とかするって何をだ
そうこうしているうちに旦那さんはパウリーネのすぐそばにまで近づくことに成功した。
パウリーネもレーザーセイバーを振り回すことを止め、真正面に構え直した。
旦那さんはいったん距離をとると、助走をつけてパウリーネに向かって突撃した。
パウリーネは旦那さんの剣撃をいとも簡単に弾き返した。
旦那さんは真後ろに倒れたが、すぐに立ち上がり、再度助走をつけてパウリーネに剣撃を加える。
今度はパウリーネはがっちり受け止めたが、やはり、弾き返し、旦那さんは真後ろに倒れた。
旦那さんは初めからそれを予測していたかのように、素早く立ち上がる。
シラネは気が付いた。
「おいっ! 旦那さんのレーザーセイバー光ってきていないか?」
◇◇◇
「光ってますね。チャージオンするかも」
ラティーファも頷く。
「おいっ、そうなると少しまずくないか? 多分、旦那さんがチャージオンしても今のパウリーネに勝てるとは思えない。下手すると記憶喪失でパウリーネの真ん前に残ることになるぞ」
シラネの懸念に、ラティーファは少し逡巡したが答えた。
「その時は、すみませんが、シラネさん、『少しだけ』パウリーネさんを防いで貰えますか? あたしが……何とかします……」
「うん。まあ、いいけど……」
シラネは腑に落ちなかった。
(『少しだけ』って何だ? 『何とかする』って何をだ?)
そうした中、旦那さんは三度目の突撃を敢行し、今度はパウリーネと打ち合いになった。
旦那さんのレーザーセイバーの光は、いよいよ煌煌として来た。
旦那さんは三度目にして、初めて自分から距離を取り、四度目の突撃を敢行した。
レーザーセイバーの輝きは眩いばかりになり、旦那さんは突撃しながら叫んだ。
「チャージオンッ!」と。
◇◇◇
天に届かんばかりの白い光の柱が立ち昇り、旦那さんとパウリーネを包んだ。
白い光が徐々に消えだした時、シラネとラティーファは光の元に向かった。
予想通りだった。
白い光の中には、平然と立つパウリーネと記憶を失い、ふらふらと歩く旦那さんの姿があった。
シラネはレーザーセイバーを中段に構え、パウリーネと対峙した。
その間にラティーファは記憶を失った旦那さんを回収し、後方に下がった。
シラネは旦那さんがそうしたように、ゆっくりとパウリーネに向かって前進を開始した。
「さて、このあたしがパウリーネにどこまで通用するか……」




