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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第五章 要塞惑星

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206/230

206 大ケガまでは許す 倒れていろ

悔しいがその通りなのだ。今のパウリーネには誰にも勝てない。シラネは唇を噛んだ。


 その時だった。

 「シラネ(姐御)っ! 俺が行くっ!」


 旦那(だん)さんがレーザーセイバーを片手に立ち上がった。


 「あんたっ! 大丈夫なの?」

 ラティーファが何時になく真剣な表情で問いかける。


 「大丈夫……じゃない」


 旦那(だん)さんの答えに周囲は慄然とする。


 「怖いんだ。こんな感じは初めてだ」


 周りは頷く。当然だ。旦那(だん)さんと言えば、とぼけているか、退屈しているかだ。「怖い」という感情とは一番無縁なはずだった。


 「だが、それでもこのメンバーで一番強いのは俺だ。勝てる気がしないが、せめて一太刀、二太刀、三太刀くらいは浴びせてくる。その後は済まないが頼む」


 「分かった。次はあたしが……」

 シラネが言いかけた時、ラティーファが遮った。


 「いえっ、シラネさん。旦那(だん)さん、いや、ホタカの後はあたしが行くっ!」


 「何言ってんだ。ラティーファちゃん。本来ならまだ『学生』なんだから、参加しないはずの戦闘なんだぞっ!」


 「分かってる。これはあたしのわがままだ。でも、あたしはどうしてもホタカの後に行きたい。ホタカが死ぬなら、あたしも相手に一太刀浴びせて死ぬ」


 ラティーファの眼はまっすぐにシラネの眼を見つめていた。


 シラネは静かに返した。

 「分かった。旦那さん(あいつ)はあんなんでも、あたしのたった一人の家族だ。それをそんなに思ってくれたんじゃ、何も言えねえよ。だがな……」


 「旦那さん(兄貴)もラティーファちゃんも死ぬな。あたしは『死んで名を残す』という感情に酔っ払う奴が大嫌いだ。大ケガまでは許す。倒れていろ。ラティーファちゃんの次はあたしが行く。あたしも大ケガしても死ぬ気はねぇ。次はアナベルちゃん、頼む」


 「はい」

 アナベルも真剣な眼で頷いた。


 「みっ、みなさん、すっ、すみません。わっ、私がもっとしっかりしていれば、こんなことには……」

 ルカイヤはかつての雄姿が見る影もなく、落ち込んでいる。


 シラネは最後にやっと笑顔を見せた。

 「ルカイヤちゃん。気にするな。今までだってこれほどではなくと逆境はあった。今回もきっと何とかなる。パウリーネも帰って来るよ」


 旦那(だん)さんはレーザーセイバーを背負うと立ち上がった。

 「ほんじゃちょっくら行ってくるわ」


 ラティーファは笑顔で声をかけた。

 「ホタカ。頑張れーっ!」


 アナベルは思った。

 「凄い人たちだ。この人達は……」




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