205 人材という概念がねぇのか
そこに現れたのは『洗脳機関第二軍団長』のイワノフである。
先の「偵察局」との交戦で坊っちゃんにレーザーブラスターで射抜かれた左足は義足だ。
シラネはイワノフを睨みつける。
「貴様ぁ、まさかっ!」
「くくく。ご明察。パウリーネは洗脳されている」
次の瞬間、ルカイヤは般若の形相で、押さえつけるラティーファとアナベルを全力で振りほどくと、目にも止まらぬ早さで、イワノフに向かいレーザーブラスターの渾身の一撃を放った。
だが、その一撃はパウリーネが軽くレーザーセイバーを一振りすると簡単に撥ね返された。
それを目の当たりにしたルカイヤはその場に崩れ落ちた。
「パッ、パウリーネ様っ! パウリーネ様っ! どっ、どうして?」
イワノフの高笑いが轟き渡る。
「はぁっはっは。見たか? ルカイヤッ、裏切り者の末路はこういったものなんだっ!」
◇◇◇
立ち上がれないでいるルカイヤに代わり、シラネが怒りを露にする。
「貴様っ、何を考えているっ! 仮にも一軍の将だった人間だぞっ! おまけに銀河最強のレーザーセイバー使いだっ! 人材という概念がねぇのかっ!」
「くっくっく。シラネ・スカイ。俺からすれば、貴様の考えが理解できんよ。いいか? パウリーネは洗脳されることで、貴様のところの旦那さんを遥かに凌駕する真の銀河最強のレーザーセイバー使いになったんだ」
「まさか……」
「そうだ。洗脳と同時に脳のリミッターを外したんだよ。今のパウリーネは身体能力をフル稼働している」
「バカな。何のために人間の脳に身体能力のリミッターがあると思ってるんだ? そんなことしたら、心身のエネルギーを使い果たし、死んでしまうぞっ!」
「いいんだよ。死んで」
「なん……だと……」
「今夜、パウリーネは貴様ら『銀河帝国偵察局』の者を全員殺す。そして、自分も力を使い果たして、死ぬ。そのことでパウリーネは『銀河連邦英雄』として、歴史に刻まれ、伝説となる。永遠に語り継がれるのだ」
「本気で言ってるのか?」
「本気だ。俺が公文書に記録を残す。本人も喜ぶだろう」
「貴様とは永遠に相容れぬな」
「何とでも言え。貴様らは全員今夜のうちにパウリーネに殺されるのだからな。今のパウリーネには貴様らが束になってかかっても勝てまいよ」
「ぐっ」




