190 ふっふっふ 若い若い
「この決戦に勝利すれば『偵察局』の大規模な組織改編がある。その時は必ずアナベルちゃんと同じ部署にするように偵察局長によく言っておくよ」
「ぼっ、僕はそんな……」
オキニィは赤面した。
(ふっふっふ、若い若い)
シラネは自分も25歳であることを棚に上げ、そんなことを思った。
◇◇◇
相次ぐ戦火に見舞われ、たくさんの破壊された砲や建物の姿が残る惑星「バストーニュ」だが、その日の空は抜けるように青かった。
(見える……)
数は減ったとは言え、未だ対空砲火は残っている。
だが、その弾道が見え、見切ることが出来る。
ついこの間までは「学術研究惑星」の一巡査だった自分が、遠い惑星で「偵察局」の最精鋭と一緒に空挺降下している。
前から見れば、随分と高みに来たのかもしれない。
これで良かったのかな……
アナベルの心中を小さな影がよぎった。
ふと、周囲を見回してみる。
まだ、かなりの高度なのに、坊っちゃんとルカイヤはレーザーブラスターの発砲を始めていた。
最初は弱かった光が徐々に強くなり、敵の施設を破壊していく。
(ふっ、すぐそばにあんな凄い人たちがいるのに、高みに来たもないですね)
アナベルは苦笑すると、レーザーセイバーを握り直した。
◇◇◇
「偵察局」の精鋭中の最精鋭はあっという間にひとつところに集結した。
通常の空挺降下では考えられないレベルの高さである。
対空砲を撃っていた部隊はそれ以上抵抗しようとせず、そそくさと宙港に向けて撤退した。
(ふん。こちらの目的は先刻ご承知って訳だね)
シラネはルカイヤと目を見合わせると、宙港へ向かい進みだした。
周囲の敵影を気にしながら進むシラネ、ルカイヤ、アナベルに対し、旦那さんは気怠そうに、堂々と道の真ん中を歩いていった。
坊っちゃんはその脇をやはりにこにこしながら歩いている。
「噂には聞いていましたが…… 凄いですね。あの二人」
呟くように話すルカイヤに、シラネは頷いた。




