164 クソ野郎がっ!
「!」
失望の色が広がる。巻き添えで吹き飛ばされた狂信的暗殺者たちはそう間を置かず立ち上がり、前進を再開したからだ。
それよりはやや遅れたもののレーザーブラスターを撃たれた狂信的暗殺者もゆっくりと起き上がった。
さすがに頭部に装着した仮面には縦に大きくひびが入っていたが、今後の戦闘に支障はないようである。
「くっ!」
坊っちゃんは唇を噛んだ。
(駄目だっ! 一人の敵に何度か撃てば、倒せるかもしれないけど、相手の数からして効率が悪過ぎる)
「みなさん。方針変更です。頭部ではなく、足を狙って下さい。これ以上の前進を止めましょう」
◇◇◇
バストーニュ防衛軍はパウリーネとルカイヤに手塩にかけて育てられた精鋭部隊である。
坊っちゃんの指示を正確に理解し、脚部の狙撃に切り替えた。
だが、狂信的暗殺者たちは右足を撃たれれば左足一本で、両足を撃たれれば這ってでも前進を続ける。
戦場は地獄絵図となり、高度な訓練を受けて来たバストーニュ防衛軍の者たちもメンタルをやられ、後方搬送される者が相次いだ。
「クソ野郎がっ!」
旦那さんは吐き捨てるかのように怒鳴った。
「坊っちゃん。胸糞悪いが俺が前線に出て、成仏させて回る。アナベルとオキニィが最後の防衛軍の人たちを連れて帰ってきたら、すぐ撤収だっ! いつまでもこんな悪趣味に付き合ってられるかっ!」
「うん。僕らは足を撃って、前進を止める。本当に嫌な仕事だけど、やるしかないしね」
◇◇◇
旦那さんは最前線でレーザーセイバーを振り回して回る。その表情は羅刹のようだ。
這って前進してくる狂信的暗殺者はレーザーセイバーの旋回と共に蒸発していく。
その後に、蒸発しそこねた仮面の一部がごとりと音を立てて転がって行く。




