162 甘い 大甘だな
あちこちで爆発音があがる。
バストーニュ防衛軍の将兵が施設を爆破しながら、撤退しているのだ。
ルカイヤを乗せたジープは湖に向かう。運転するのはシラネだ。
ジープに「洗脳機関」の戦闘員が次々襲撃を仕掛けるが、坊っちゃんのレーザーブラスター射撃の敵ではない。
湖までは15キロしかない。ジープはあっという間に目的地に着く。
樹木でカモフラージュされ、上空から視認しにくくなっている大きな倉庫には確かに「航宙艇」が隠されていた。
「操縦はどうするの?」
坊っちゃんの問いに、シラネは答える。
「あたしがする。あたしらとは別に降下したアナベルちゃんとオキニィはこっちに向かってるのか?」
「さっき旦那さんが座標を連絡した。バストーニュ防衛軍の人たちと一緒に撤退してくるって」
「OK。あたしはルカイヤを見てるから、アナベルちゃんたちが来るまで、坊っちゃんは旦那さんと一緒に追撃してくる『洗脳機関』に対応してくれ。アナベルちゃんが来たら、ルカイヤを見させて、あたしは操縦に専念する」
「りょーかいっ!」
坊っちゃんはレーザーブラスターを構えた。気分は昂揚している。普段は旦那さんの暴走の歯止め役だが、根っこのところは戦闘好きなのだ。
◇◇◇
「ふん。ルカイヤの奴め。あんなところに『航宙艇』を隠してやがったのか」
ソローキンは忌々し気に部下の報告を受けた。
「で、もう離陸して逃げたのか?」
ソローキンの問いに部下は無感情に答える。
「いえ。バストーニュ防衛軍の敗残兵を全て収容していくつもりのようです」
「ふっ。甘い、大甘だな。あいつらは」
ソローキンは不機嫌そうに言い放ち、再度問う。
「宙港は制圧できたのか?」
「はっ、もう既に宙港に『バストーニュ防衛軍』はありません」
「よし。宙港を制圧した部隊を湖に向けろ。ちゃんと挨拶してやらないと失礼に当たるからな」
「はっ」




