157 本当にチャージオンしちまうぞ
当然、ルカイヤは負けていない。
「それを受け入れられないから、こちらは『独立宣言』したのです。そういうお話しか出来ないないなら、速やかにお引き取り下さい」
「五つもの惑星の支配権を喪失した責任を取らないのか?しかも、一人の死者もだしていないとは、やる気が感じられない。そんな貴様らに、こんな重要拠点の管理が出来るとでも言うのか?」
「支配権喪失は『バストーニュ』占領で差し引きプラスくらいです。死者の数でしか貢献度が計れない方にうちの軍団を任せる訳にはいきません」
議論は長引いた。ディスカッションが得意ではないパウリーネは思わずあくびをした。それを見た第三軍団長のソローキンの眼が光った。
「どうだろう。議論が長引いて、疲れが出て来ているし、体を動かしては?おい、おまえら」
ソローキンは後方に控える「指揮官」に声をかけた。
「はっ」
三人の「指揮官」が前に出た。
「あちらの代表者様はお疲れだ。お相手してやりなさいっ!」
「はっ」
三人の「指揮官」はレーザーセイバーを構えた。
「おっ、やろうってのかい」
パウリーネも立ち上がった。
「なっ」
当惑するルカイヤを尻目に、ソローキンは続ける。
「この会議室はいかにも狭い。外で体を動かしては……」
「よしっ、おまえら来いっ、ちょっともんでやる」
「はっ」
三人の「指揮官」はパウリーネと共に外の中庭に向かう。
「待って下さい。パウリーネ様。貴方たちも三人、一緒に行ってください」
ルカイヤは後ろのレーザーセイバー使いに声をかける。
「何言ってんの。ルカイヤちゃ~ん。三人くらい、あたし一人で軽く相手してやるよ」
パウリーネの声は弾んでいる。
「いえ。パウリーネ様。そういうことじゃなく」
もはや、ルカイヤの声はパウリーネに届かなかった。
窓からソローキンが声をかける。
「パウリーネ。構わないから『チャージオン』してしまえっ!」
「おっ、言ったな。本当に『チャージオン』しちまうぞ」
パウリーネは上機嫌のままだ。




