152 第五章プロローグ
「ありがとうございます。これで決心が固まりました」
送られてきた通信内容を一読したルカイヤはそう呟いた。
送られてきた通信は「洗脳機関」の第一から第四軍団長の連名での、第五軍団長とその秘書の自主的な辞任の勧告文だった。
(まあ、そのことはいいのです。「銀河帝国」の「偵察局」の陽動作戦に見事に引っかかり、五つの惑星の支配権を喪失したのは事実ですから)
問題はその後だ。前回の戦闘で一人の死者も出さなかったことを「第二軍団」が「指揮官」七名の死者を出したことと比べ、組織への忠誠心が欠けるとし、痛烈に批判している。
(馬鹿ですか? 全く。大体、『第二軍団』はもっと死者を出してるじゃないですか。『現地徴募兵』や『狂信的暗殺者は名誉の戦死に入れないという訳ですか)
(あんな方々に、手塩をかけて育てた精鋭の『第五軍団』の兵員を一人たりとも任せられません。となると……)
「独立。『洗脳機関』からも『銀河連邦』からも独立。それしかないですね」
◇◇◇
「ルカイヤちゃ~ん。ばかにサッパリした顔してるじゃーん。遊ぶ? それとも結婚する?」
パウリーネのいつもの問いに、ルカイヤはいつもと違った調子で答えた。
「いいんですか? パウリーネ様、私と結婚すると、新婚旅行に他の惑星にも行けないし、『銀河連邦』内の故郷の惑星にも行けない。それどころか、一生、この『惑星バストーニュ』から出られないかもしれないですよ?」
「えっ? それはプロポーズにYESということでいいのね?」
「そっちだけ飛びつかないで下さい。私の質問に答えていないじゃないですか」
「う~ん。ルカイヤちゃんと一緒なら、一生、この惑星でもいいかな。あ、でも……」
「何かあります?」
「たまにはさ~、あの『旦那さん』って奴、ケンカ相手に呼んでくれる? 弱い相手ばっかだと、つまんなくてさ~」
「はああ~」
ルカイヤは溜息をついた。
「まあ、いいでしょう。独立宣言してしまえば、『銀河帝国』の『偵察局』も交渉相手になり得ますし……」




