150 たぶらかされてやがる
「第五軍団長パウリーネ及び同秘書ルカイヤの解任を上申します」
「洗脳機関第二軍団長」は「洗脳機関総裁」にそう言った。
「何故。そのような上申をする?」
総裁は淡々と返した。第二軍団長は大げさに驚きの表情を見せる。
「逆にお聞きしたいですな。何故、この上申に疑問を持たれるのか? 『第五軍団』は勢力扶植に失敗し、五つもの惑星を放棄した。軍団長と秘書の救出に『フォージャー』を使い、『銀河帝国』側に『洗脳機関』と『銀河連邦』の繋がりを察知された。最も許しがたいのは『狂信的暗殺者養成のための洗脳システム』を破壊せずに撤退し、むざむざ『銀河帝国』に渡したこと」
総裁は大きく息を吐くと、ゆっくりと反論した。
「五つの惑星を失ったのは確かに痛い。しかし、代わりに要塞惑星『バストーニュ』を確保した。『銀河連邦』との繋がりを知られたのも良くないが、軍団員は犠牲を払ってまでも軍団長たちを救出したかったのだ。団結力の強さは捨てがたい。『洗脳システム』を奪われはしたが、ルカイヤは優れた『指揮官養成システム』を開発している」
「(ちぃっ、総裁め。あの小娘どもにたぶらかされてやがる)……」
「それにあの二人を解任して、誰が惑星『バストーニュ』を守るのだ?」
「それは、七人もの『指揮官』の犠牲を出し、経験豊富な『第二軍団』が……」
「(自分たちが『ビル・エル・ハルマート』『アクア3』『学術研究惑星』で失敗したことは棚上げか)…… まあいい。この件は預かる。今日はもう部署に戻れ」
「はっ、良い知らせを期待しております」
第二軍団長は退席した。
(ああは言ったが、総統は当てにならん。『第二軍団』も隠密裏に独自に動かねばならんか……)




