149 その答えは今は分からない
「そうとも言い切れないだろうけど……」
「ほう?」
「『銀河連邦』からしてみれば、『洗脳機関』と繋がりがあるとか前面に出したくないでしょう」
「そりゃそうだ。実際には繋がりがあっても『銀河帝国』側が流した虚報だと言い張るだろう」
「逆に『洗脳機関』が『銀河連邦』との繋がりをアピールしたら、『銀河連邦』は『そんなことを余り言うな。続けるようなら、支援も控えるぞ』とかもあるよね」
「うーん。一般人を洗脳して自爆攻撃させる組織だからな。そことの強力なコネクションをアピールされたら……」
「『銀河連邦』内部で政治抗争のタネになりかねないよ」
「そうか。しかし、かと言って『銀河連邦』も今『洗脳機関』を切り捨てる気もないんじゃないか?」
「まあね。まだまだ国力では『銀河帝国』が『銀河連邦』を凌駕しているのは事実だしね。『銀河帝国』内に潜入して、帝国民を洗脳し、帝国民同士で戦わせる。おまけにカネまで巻き上げる。弱者の戦術としてはかなり有効なのは間違いない」
「今回、完全制圧した五つの惑星には航宙軍が常駐することになった。『銀河連邦』を刺激するが、仕方あるまいな」
「うん。そうだね」
「さて、これからどうなるか……」
「『バストーニュ』攻略戦やるとなると、規模的にもう『偵察局』の範疇じゃないしね。だけど……」
「だけど?」
「いや何でもない」
シラネはルカイヤの心境に思いを寄せていた。
(ルカイヤ。『狂信的暗殺者養成のための洗脳システム』をわざと破壊しないで残してくれた。これでこちらは洗脳対策のプログラムが作れる。本当は『洗脳』が嫌いなんだね)
(ルカイヤ。本当は『銀河連邦』製の垂直離着陸航宙機を見せてまで、脱出したくはなかったんじゃないか? だが、自分を慕う部下たちが本来なら隠したい『フォージャー』を使ってまで助けに来た。その気持ちに応えなければならない。そう思ってるんじゃないか?)
その答えは今は分からない。




