148 全面開戦だぞってアピールしてるのか
「ケースBQでいいんですね?」
機長はルカイヤに問うた。
「その通りです。辛うじて準備が間に合ったの……ですか?」
「そうです。難攻不落要塞の完成です。銀河中に眼にもの見せてやりましょう」
「そうですね」
ルカイヤは静かに笑顔を見せた。その笑顔の裏に複雑な感情があることは誰も知らなかった。
いや、姐御ことシラネ・スカイだけは何となく気付いていたかもしれない。
◇◇◇
「惑星『バストーニュ』に入ったのか?」
偵察局長の問いに、シラネは珍しく力なく答えた。
「ああ、それに気付いて、大慌てで追撃したんだが、間に合わなかった。すまん」
「うーん。最後の最後でしてやられたなあ」
惑星『バストーニュ』。先の「大戦争」で「銀河連合」が難攻不落要塞と称した惑星である。
現に「銀河同盟」の侵攻で周囲の惑星群は次々陥落する中、「バストーニュ」だけは「銀河連合」が保持し続けた。
補給ルートを切断されることを恐れた「銀河同盟」は何回となく強襲をしかけたが、ついに終戦までの4年間、陥落することはなかった。
「だけど、どうする気なんかな。ここまでやると『銀河帝国』内の一惑星を『洗脳機関』が不法占拠したことになる。それはつまり『銀河帝国』に真正面からケンカ売ったってことだ」
偵察局長のもっともな疑問に、シラネは自論を述べる。
「バックに『銀河連邦』がいるってことだね」
「うっ、やはりそうか」
「そりゃそうだよ。『アクア3』で使った『航宙艇エミリー』は『銀河帝国』製のものではあるが、所詮は型落ちの旧式だ。だが、今回使った『垂直離着陸航宙機フォージャー』は……」
「現役バリバリだよ。『銀河連邦』内の紛争でもよく使われている」
「そういうこと。それを連邦内の同盟国でもない犯罪組織が持ってるって、後方支援されてますって言ってるようなもんだよ」
「やばいなあ。これ以上『洗脳機関』に手を出すと、『銀河連邦』との全面開戦だぞってアピールしてるのか?」




