146 それは買いかぶりというものです
旦那さんとパウリーネの一騎打ちはいよいよ佳境を迎えようとしていた。
チャージオンは近い。
「ウィルツ宙港」の制圧を終えたアナベルたち「偵察局」の部隊は拠点工場周辺に戻って来ている。
「チャアァァァジイィィィィオオォォォンッ」
「チャアァァァジイィィィィオオォォォンッ」
旦那さんとパウリーネは同時に叫んだ。パウリーネの雄たけびは高度のハーモニーを奏でた。
◇◇◇
白い光が徐々に消え、ルカイヤと坊っちゃん以外の者も視力を取り戻した時、ルカイヤはパウリーネを、坊っちゃんは旦那さんを抱え込んでいた。
「偵察局」の部隊は、ルカイヤとパウリーネを包囲した。
もっとも、ルカイヤの実力をもってすれば、包囲突破は全く不可能でもない。
しかし、包囲を突破したところで、宙港の支配権を喪失している以上、この惑星を脱出することは出来ない。
「坊っちゃん。ここは私に任せて貰えませんか?」
アナベルは一歩前に出た。
◇◇◇
アナベルはルカイヤと対峙した。
「ルカイヤさん。改めて自己紹介します。『星間警察』から『偵察局』に出向の形になっているアナベルといいます」
「確かお会いするのは三回目ですね」
「さすがですね。先に『洗脳機関第五軍団』の投降者の身の安全を保証します」
「ふふ。『偵察局』のことだから言うまでもないと思っていましたが、そう言われると安心出来ますね」
「ありがとうございます。それで、ルカイヤさん。貴方はとても尊敬できる人ですね」
「それは買いかぶりというものです」
「いえ。巧みな戦術。逆境にあって失わない冷静さ。そして、何より部下の生命最優先の姿勢。どれをとっても尊敬できる方です」
「そうですか。ありがとうございます」




